2018年5月28日
第1回 事業計画が必要な本当の理由とは?
なぜ事業計画を立てるのでしょうか?計画が大切なことは小学校でも教えているので、誰もが知っていることでしょう。そもそも計画とは、ゴールに向かって、その方法や手順を組み立てたものです。ゴールを明確にして、現在地を明確にするからこそ、そのプロセスを組み立てることができます。
ところが、しばしば絵に描いた餅で終わることが多いというのが実情です。絵に描いた餅になる原因は、おおむね2つの理由が考えられます。
一つは、「その作成した計画に対して、従業員が具体的な達成イメージを持てていない」ケースです。
私が主宰する会員制ビジネススクール『リーダーズアカデミー』で提供している独自メソッド「組織づくりの12分野」の中では、人が動く理由について「人は、自らがイメージできたことに対して、高い価値観(優先順位)を置けた時に動く」と解説しています。
イメージには、ゴールイメージとプロセスイメージの2つがあります。
ゴールイメージとは、「こうなるんだな~」「こんなことが起きるんだな~」という最終イメージです。富士登山をするときの山頂から見える景色のイメージですね。プロセスイメージとは、「いつまでにこうやって、次にいつまでにこうやって、その次にいつまでにこうやってやればいいんだな~」という、富士登山をするときの山頂にたどり着くまでのイメージです。
従業員の頭の中に、このイメージを作り上げて行動を引き出すためにも、計画が必要なのです。
絵に描いた餅で終わってしまうもう一つの理由は、「現在地の不明確さ」です。
計画を作成する際に陥りがちな過ちですが、未来にばかり目を向けすぎて、現在地の把握が欠落しているのです。現在地が明確であり、ゴールが明確だからこそ、たどり着くまでの最短の道のりや、準備するもの、準備に要する期間などが明確になってくるわけですが、あまりにも未来志向になりすぎて、今を見失ってしまうことがよくあります。
こうした計画の立て方をしている会社は、計画の修正・修正・修正の連続で、「そもそも何のために作った計画なの?」ということになってしまうのです。
いま現在のあなたの会社の社会的地位や能力、実績、規模など、今ある姿を作り上げたものは何ですか?これは、今まであなたの会社が何をしてきたかという「過去」です。では、10年後、20年後のあなたの会社を作り上げるものは何ですか?これは、あなたを中心とした会社が、これから何をしていくかという「未来」です。今のあなたの会社の姿が、過去にまいてきた種から咲いた一輪の花であるように、10年後に手に入れたい花、要するに理想の会社の姿は、これからどのような種をまくかによって決まります。
10年後の花の姿に美しい物を求めるのであれば、質の良い種をまき、大切に育てていく必要があります。従業員に質の良い種を一緒にまいてもらうためにも、ゴールを明確にし、現在地を明確にし、その道のりを埋めるためのプロセスを組み立て、しっかりイメージができるように、事業計画の共有と浸透を図ってください。
嶋津 良智(しまず よしのり)
・一般社団法人 日本リーダーズ学会 代表理事
・リーダーズアカデミー 学長
・セミナーズアカデミー 学長
・早稲田大学 エクステンションセンター講師
日本唯一の『上司学』コンサルタント。大学卒業後IT系ベンチャー企業に入社。同期100名の中で最年少営業部長に抜擢され、就任3ヵ月で担当部門の成績が全国No.1に。28歳で独立、2004年5月株式上場(IPO)を果たす。業績向上のための最強の組織づくりをノウハウ化した独自プログラム『上司学』が好評を博し、世界15都市でビジネスセミナーを開催。シリーズ100万部のベストセラー「怒らない技術」をはじめ、著書累計150万部を超える。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.334(2018年6月1日発行)」に掲載されたものです。