シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第6回 16年増収中の優良企業が、 利益を重要視しないワケ

中小企業のための 勝つ!組織のつくり方

2018年11月1日

第6回 16年増収中の優良企業が、 利益を重要視しないワケ

  
 

「利益は、企業や事業の目的ではなく、条件なのである」。これは、経営学の父ピーター・ドラッカーの言葉です。しかし、当たり前と言われながらも、増収増益を継続できる企業は、ほんの一握りしかありません。

 

 国税庁が発表した中小企業の会社生存率では、
・設立10年後の存続率…6.3%
・設立20年後の存続率…0.4%

 

というデータが出ているほどです。これを見ただけでも、中小企業が利益を出し続け、会社を存続させていくことの難しさが伺えます。

 

では、なぜ多くの中小企業は、利益を出し続けることができないのでしょうか。その理由は多々あるのですが、そのひとつに、「利益の使い道を間違えている」ということが挙げられます。

 

あなたの会社では、利益をどこに使っているでしょうか。少し振り返ってみてください。もしかすると、出た利益を何かのために貯めているという企業もあるでしょう。もちろん、一定の留保は必要なのですが、必要以上に残す必要はありません。内部留保が多い会社は、利益を還元されないと不満をもつ社員からの反発が起こりやすく、組織全体でのモチベーション低下が起きやすくなります。また、業務に必要な機械や備品への投資も少ないため、全体の生産性が低く、競争力が落ちがちです。

 

このような理由で、必要以上に内部留保を抱える企業は、長く繁栄し続けるのが難しいと言わざるを得ません。

 

では本来、会社に残った利益は、どのように使うのが適切なのでしょうか。端的に言うと、さらに大きな未来の収益のため、積極的に資金を費やすべきです。

 

16年連続増収を継続している、「株式会社武蔵野」がその好例です。

 

武蔵野が、どのように利益を使っているかというと、第一優先として、「顧客数を増やす」ための取り組みや施策に、多くの資金を投じています。

 

武蔵野では、顧客単価を維持し、顧客数を上げることが、本当の意味での経営の安定に繋がると考えているため、そのための投資は、惜しまない方針なのです。

 

そして、その次に優先度が高いのは、「社員教育」です。聞くところによると、武蔵野では、粗利益25億円のうち、教育研修費に1億円近くを投じた年もあったようです。これは、武蔵野が、人が成長すれば、それに比例して、会社の業績も良くなるという考えをとても重視していることによります。

 

ここまで色々な場所に投資をして、最後に残るのが「経常利益」です。一般的な企業は、利益が出たら「経常利益」を最優先しますが、武蔵野での優先度は、一番最後なのです。
この例からも分かるように、私たち経営者がやるべきことは、会社に多くのお金を残すことではありません。本当にやるべきなのは、会社や社員をさらに成長させるために適切な場所に投資をすることです。

 

利益の使い道を決断することは、とても難しい作業ではありますが、ここが経営者の手腕が問われる部分です。あなたの会社も、利益を適切な場所に再投資できれば、武蔵野のように、自ずと5年、10年増収を続ける企業へと成長していきます。また、それに伴って、どんな逆境でも決して潰れることのない強い組織が構築されていきます。

 

年初に掲げた利益目標を越えたら、それ以上の部分はすべて投資に回す。このくらいの考えでも、全く問題ありません。

 

ぜひ、あなたも、長期的な会社の成長に目を向け、そのための投資を重要視してください。そうすることで、あなたの会社は、顧客、従業員双方から喜ばれる、超優良企業へと成長していけるでしょう。

 

プロフィール
嶋津 良智(しまず よしのり)
・一般社団法人 日本リーダーズ学会 代表理事
・リーダーズアカデミー 学長
・セミナーズアカデミー 学長
・早稲田大学 エクステンションセンター講師

日本唯一の『上司学』コンサルタント。大学卒業後IT系ベンチャー企業に入社。同期100名の中で最年少営業部長に抜擢され、就任3ヵ月で担当部門の成績が全国No.1に。28歳で独立、2004年5月株式上場(IPO)を果たす。業績向上のための最強の組織づくりをノウハウ化した独自プログラム『上司学』が好評を博し、世界15都市でビジネスセミナーを開催。シリーズ100万部のベストセラー「怒らない技術」をはじめ、著書累計150万部を超える。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.339(2018年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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