2013年4月26日
日本の企業文化を熟知した経営戦略コンサルティング
Corporate Directions, Inc.(CDI) Asia-Pacific Pte. Ltd.
経営戦略コンサルティングファームのコーポレイト ディレクション(Corporate Directions, Inc./CDI)が2012年4月、シンガポールにCorporate Directions, Inc.(CDI) Asia-Pacific Pte. Ltd.を設立した。
トップの意思が如実に組織に反映されやすい外資系の大企業に対し、日本の大企業はトップ層だけでなく中間管理職も組織をつくりあげる。CDIは欧米の合理的経営戦略思考を日本の企業文化に融合させることを基本理念とし、経営戦略コンサルティングを行う。
すでに上海、タイ、ベトナムに支社を持っていたCDIにシンガポール支社設立を提案し、CDIアジアパシフィックのディレクターを務めるのが、小島隆史さん。
「アジアを国ごとの『点』で考えるだけでなく、地域として『面』でとらえ、ハブとなる拠点が必要と考えて、シンガポールに事務所の設立を提案しました」。
CDIアジアパシフィックは主に日系企業の顧客向けに経営計画立案・実行支援、市場調査、M&A(企業買収・合併)、そしてアジアへ進出を考えている企業のためのコンサルティングなどを行う。
「日系企業がアジアへ進出する場合、現地の会社を紹介されたから提携するというような、出会い頭的な進出のケースが多い。そこで当社が綿密な事業計画を作成します。アジアの国はそれぞれ経済構造が異なり、進出の際に独資がいいのか、合弁がいいのか、直販か、代理店経由かなどを考える必要があります」。
M&Aに関しても、アジアの特徴があるという。
「アジアでのM&Aに関していえば、すでに案件ありきということが多い。本当にその会社を買うべきなのか、中・長期の経営戦略の中で必要なのか、検討すべき“ものさし”が定まっていないケースがめだちます。この場合、そのものさしをつくるのが私たちの仕事となります」。
経営戦略を組み直すため会社のすべてを変える
シンガポールでは、すでにアジアへ進出し、シンガポールに拠点を置く会社の経営戦略を組み直すという案件が多い。
「アジアでのビジネスにおける経営戦略を組み直す場合、戦略と同時にその企業をすべて変えることになります。戦略に応じて、人事(採用・報酬制度)、営業、情報システム、組織体制のすべてをワンセットで変える必要があるからです。こうした見直しは、思うような業績が出ない場合に行うとは限りません。会社として業績が伸びていたとしても、市場はもっと成長していることがあるのです。アジアの市場成長に見合った業績の成長、売り上げを達成しているのかを考えなくてはいけません。例えば製造業が先進国におけるシェアだけを追い、新興国に注力しなかった結果、いつのまにかグローバルな競争に取り残されてしまっていた、ということもありえるのです」。
案件を担当するCDIの担当者は、特定の業界についての経験や専門的な知識を持ちつつ、ほかの業界にもちゃんと目を向けている。
「例えば、私のように製造業の案件を多く経験しているということはありますが、業種ごとに担当が固定化しているということはありません。いろいろな業界の動向に注意し、今、ある業界で起きていることが、数年後には違う業種で起きる可能性があると、アドバイスできるようになることが重要です」。
会社プロフィール
株式会社コーポレイト ディレクション(本社・東京都品川区)は1986年、外資系戦略コンサルティングファームに在籍していたコンサルタント10名によって、日本初の独立系経営戦略コンサルティングファームとして設立。日本および海外の一流企業や官公庁の外部ブレーンとして多くの実績を持つ。
Corporate Directions, Inc.(CDI) Asia-Pacific Pte. Ltd.
80 Robinson Road #10-01A Singapore 068898
TEL:9446-4589
取材後記
米国ペンシルヴァニア大学ウォートン・スクールMBA、そしてジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)国際関係論修士号(国際経済学・国際開発学)を持つ小島さん。「MBAだけでなく、発展途上国の開発について学びたいと思い、開発学も専攻しました」。
尊敬するのは理想主義経済学者だった河合栄治郎(1891年~1944年)という。「高校時代に著書『学生に与う』」を読んで感銘を受けました」。
小島さんは日本の大学院MBAコースで講師も務めており、今も隔週で講義があるため日本へ行く多忙な日々を送る。「旅行、ダイビング、読書、カメラ……。やりたいことはいろいろあるのですが、今、休日は専ら家事をして過ごしています」。