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ビジネス特集

2013年1月1日

実りある2013年に「モチベーションの上げ方」

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新年を迎えると、「気持ちを新たに頑張ろう!」と清々しい気分になります。でも、1年365日ずっと同じ気分、というわけにはなかなかいかないもの。そこで、ビジネス書やセミナーなどを通じてビジネスパーソンを啓蒙し続けている著名な方々9名に、自分のモチベーション、他人のモチベーションをそれぞれ上げるには?と問いかけ、アドバイスを伺いました。9つのアドバイスから自分に合うものをぜひ見つけて、実りある2013年にしましょう!

 


とにかく始めて、いろいろ試しながら最適なものを探しに行く

p1細谷 功(ほそや いさお)

ビジネスコンサルタントとして活動する傍ら、著作・翻訳、講演・セミナーなどでも活躍。最新刊は『ハスラー プロフェッショナルたちの革新』(亜紀書房:細谷功選、訳、解説)。

細谷功のホームページ

AsiaX読者の皆様、あけましておめでとうございます。

新年にあたり、1年を通じてモチベーションを維持していくためのヒントについてお話したいと思います。

一言で表現すれば、(年単位以上の)長期でモチベーションを維持するには「好きで自分が向いていること」をやるのが一番だと思います。

ただこれは言うのは簡単ですが、それを見つけるのが一苦労です。そこで参考にできるのが、最近のビジネス界での「新製品開発」の考え方の変化です。従来の新製品というのは周到な市場調査やパイロットテストに基づいて完璧な品質になるまで試験を繰り返して合格となったものがいよいよ市場に出てくるという、入念に時間をかけた「不退転の決意」で望むべきものでした。ところが最近では特に一般消費者向けICT(情報通信技術)の世界等において、「テスト用半完成品」(ベータ版)をまずは市場に出すことで「数々の改良施策をしながら」、うまく行ったものだけを生き残らせるというアプローチが取られることがあります。

この考え方を私たちの身の回りの取り組みにも応用したらいかがでしょうか。「何が自分に向いているのか?」と考え抜いてから始めて、途中で嫌になっても「無理矢理モチベーションを上げながら」やるのが「従来型」のやり方ですが、「とにかく始めてだめならすぐに軌道修正をかけて、スピーディーに多数試すことで最適なものを探しに行く」というのがもう一つの考え方です。そうすれば「飽きっぽい」という短所は「次々に新しいものへの興味がわく」という長所に転換できます。

「三日坊主を気にしない」ことで、いろいろ試して本当に好きなものを探すというのも現代にフィットしたやり方かも知れません。

2013年が皆さんにとって素晴らしい1年になることを願っています。

 


ダニエル・ピンクが提唱する3つの要素でモチベーションを高める

p2鳥内浩一(とりうち ひろかず)

100業種以上のクライアントを業績向上に導いた経験と自身の研究と実践から、日本人の精神と世界最先端の経営理論を融合させた『日本発新資本主義経営』の普及活動を行っている。

株式会社リアルインサイト

ダニエル・ピンクは、著書『モチベーション3.0』(原題:Drive!)の中で、人のやる気を高め、能力を最大限に発揮するためには、3つの要素が重要であるという研究結果を明らかにしました。基本的に私にはこれがしっくりきています。

一つ目の要素は、意義ある目的です。私は、従来の資本主義が生み出した経済・社会の問題解決という使命に突き動かされて会社を創り、活動していますが、その使命を思う時、その達成に向けたタイムリミットを思う時、心が奮い立ちます。二つ目の要素は、成長です。私の場合、成長に向けて自分を奮い立たせてくれるのは、ライバルの存在です。ライバルと言っても、別に身近な人とは限らず、著名人や歴史上の人物でも、自分と同じか若い年齢で偉大な業績を残していることを知る時、「負けていられない」と奮い立たされます。三つ目のポイントは、自律性です。自分の好きなことを、自分の思うやり方でやる。そんな時間をバランスよく取り入れることで、私はモチベーションを高めています。

他人のモチベーションを上げる際も多くの場合は同様ですが、人それぞれやる気のスイッチは違うため、その人の過去と未来にアプローチしてそれを探ります。過去に感動したり、嬉しかったり、心が震えた出来事を書き出して、それを振り返ってもらったり、私の方からその人の素晴らしい働きを思い出して褒める。あるいは、その人の夢や目標を聞き、今の状況や仕事に取り組むことがそれに向かうようにサポートする。結局は、その人が充実した人生を送れるようサポートすることに尽きるのではないでしょうか。

 


動く仕掛けや仕組みを作っておく

p3本田直之(ほんだ なおゆき)

東京とホノルルを拠点に、日米のベンチャー企業への投資事業やレバレッジマネジメントのアドバイスを行っている。最新刊『会社で不幸になる人、ならない人』など著書多数。

レバレッジコンサルティングWebサイト

自分自身、モチベーションが下がることはありません。というのも、モチベーションが上がっている、下がっている、というのは自分の気分の問題で、誰かが決めるものではないからです。モチベーションが下がっても物事はうまくいかず、何もいいことはありません。

多くの方が意志の力を過大評価しているのですが、人間の意志は弱いものです。まずは自分が弱いことを認めること。それでも何かやりたいなら、自分が動く仕掛けや仕組みを作っておくことです。例えば僕自身、2ヵ月ほど先まで日々の予定が入っています。この日にこの予定があるから、この予定はここまでに入れなければ、と後の予定も決まっていきます。朝からいろいろ考えて行動するのは大変なので、そうしなくて済むように工夫するのです。また、誰かと一緒に行動する約束をしておくのも有効です。サボることができなくなりますから(笑)。

他の人に何かをやってもらうには、仕組みだけでは不十分です。部下であれば、本人がどうなりたいのか、どうしたいのかを上司もわかっている必要があります。本人の状態や、どのような人生を望んでいるかによって、本人に気付かせるような本を紹介したり、話をするのも良いでしょう。若い人にはよく、ディナ・シーリグが書いた『20歳のときに知っておきたかったこと』というスタンフォード大学の集中講義を書籍化した本を勧めます。学生向けですが、40代で読んでも良書だと思います。

 


どんな困難に遭遇しても頑張れる「モチベーションエンジン」

p4嶋津良智(しまづ よしのり)

(株)リーダーズアカデミー代表、シンガポール在住。アジアエックスにてコラム『リーダーにつける薬』を連載中。最新刊『死ぬほど働いて損があるか!』も好評。

リーダーズアカデミーWebサイト

人生の計画書や行動計画書を立てたものの、行動をしていく段階で出現する「悪魔君」がいます。それは、「妥協」、「諦め」といったことにつながるモチベーションの低下です。

では、この「悪魔君」を克服するために何が必要なのか?それは、どんな困難に遭遇しようが「私はこのために頑張っている」と言える、自分を支えているものが何なのかを明確にすることです。私はこれを「モチベーションエンジン」と呼んでいます。

人生は、そもそも思い通りに行かないことの連続です。そこから逃げずに立ち向かって乗り越えていくためにも、頑張るエンジンが必要です。困難の難易度が高ければより強力な馬力のあるエンジンが必要なので、エンジンはいくつもあっていいと思っています。例えば、

「あいつにだけは負けたくない」という【負けず嫌いエンジン】

「これをやり遂げたら自分に○○を買ってやろう」という【ご褒美エンジン】

「家族を海外旅行に連れて行ってやりたい」などの【貢献エンジン】

「早く昇進したい」「給料を上げたい」など【向上心エンジン】

この「モチベーションエンジン」は、作成した計画書の裏側にある、その人の本能に起因する隠れた大切なものなのです。私は公道では走れないような「F1」なみのエンジンを積んで頑張っています(笑)。

皆さんも「モチベーションエンジン(頑張る理由)」を明確にして、作成した計画書に魂を吹き込んでください。また、上記のことを、誰かに「モチベーションエンジン」を持ってもらうヒントにしてください。

 


自然にやる気を生み出そう

p5マツダ ミヒロ

質問家。「魔法の質問」主宰、一般財団法人「しつもん財団」代表理事。『しつもん仕事術』(日経BP社)ほか著書多数。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー。

マツダミヒロ事務所Webサイト

「どのようにしたら、やる気が出ますか?」

これは、ぼくがよく質問されることです。ぼくの答えは

「やる気は出さなくてもいい」です。

やる気は、出すものではなくて自然に出てくるもの。不自然に出したやる気は、無理やりモチベーションをあげているだけ。無理やりモチベーションをあげるのは、一瞬はいいのですが、その力は継続しません。だからこそ、自然にやる気が生まれることが大切なのです。

自然にやる気を出すために、ぼくが使っている質問は

「その先には何があるだろう?」です。

目の前にある、やるべきことだけではなく、そのことにチャレンジしたあとに何があるのか。それを見つけることができたら、自然とやる気が出てきます。

「なぜ、これを行うんだろう?」

この質問にも答えてみると、より明確になっていきますね。

2013年は「無理やり」ではなく、「自然に」がぴったりの年。無理していたものや、自分に嘘をついて行っていることはどんどん崩れていきます。自分が本当にやりたいことを見つけ、自然にやる気を生み出して、素敵な年にしていきたいですね。

 


上げる仕組みを行動パターンに組み込む

p6池本克之(いけもと かつゆき)

ドクターシーラボ、ネットプライスを経営者として上場させた経験を生かし、多くの企業の成長をコーチングしている経営プロコーチ。マーケティング、リーダーシップに関する著書多数。

池本克之公式サイト

経営者に上司はいません。何を、どれだけやるか、またはやらないかの選択は100%自分の意思決定です。極端な話、会社が潰れさえしなければ、いくらでもサボれるわけですが、実際にはそうはいきません。その意味で、経営者は常にモチベーションと戦っていることになります。「意欲満々、ハイテンションで、元気よく仕事に取り組まなければ、成果が出るわけがない」これが世の中の常識です。しかし、それは本当でしょうか?

もちろん、私もモチベーションは高い方がいいとは思いますが、モチベーションが高くても低くても、やるべきことをきっちりやれば成果は出るので、モチベーションと成果は完全に一致しません。

こう言うと、「そんな筈はない。優秀な経営者は皆、モチベーションが高いじゃないか」と反論が聞こえてきそうです。しかし、実際に彼らがやっていることは、モチベーションを上げる仕組みを行動パターンに組み込んでいるだけなのです。例えば、私のようなコンサルタントを雇う理由にも、いつまでに、何を、どのレベルまでやるかを私と約束することが、モチベーションを上げる仕組みになっているのです。モチベーションがどうであれ、行動する仕組みを作り、自動的に成果が出るようにしているのです。

考えるべきは「どうすればモチベーションを上げられるか?」ではなく、「どうすればやるべきことをきっちりやれるのか?」なのです。なぜなら、大事なことはモチベーションではなく、成果だからです。

 


食べ物、本、運動、脳内物質… モチベーションの上げ方いろいろ

p7手塚祐基(てつか ゆき)

周期的に「脳の気分」が変わり、トレンドが生み出されるという仮説「感性トレンド」に基づいた様々な研究結果を基に、製品開発コンサルティングや講演、セミナーなどを行っている。株式会社感性リサーチ客員研究員

『感性トレンド研究日誌』

美味しいものを食べると私の場合、モチベーションが上がります。それも自分で簡単に作れて、しかも安い「するめいかのワタ焼き」が効く気がします。するめいかは、生で一杯100円ぐらいで売っているときがお勧めです。ゲソの吸盤にある丸い爪みたいなものをこそげ落とすプチ達成感も味わえ、これを食べると、翌日むやみに元気で、やる気満々になるのです。

なんとなく自分がしょぼいな~、と思うときは偉人の本を読みます。中でも山口昌子著の『シャネルの真実』を読むと、「志高く生きよう」と意欲が出ます。

食べ物と本以外だと、軽く汗ばむくらいの運動を朝すると、下降気味の気分も立ち直ります。運動は男女関係なくドーパミンとノルアドレナリンが出て、それが脳に、モチベーション、好奇心、集中力をもたらします。ちょっとだるいときは、思い切って運動しましょう。

男性は、女性よりもモチベーションを上げるホルモンのテストステロンが分泌されるので、このホルモンの恩恵を受けたいですね。これは昨年もお話しした早寝早起きをすると良く分泌します。その他、体力の極限まで自分を追い込む厳しい修行やスポーツ、過酷な仕事など、生命の危機のときも分泌量が増えます。早寝早起きが不得意な方は、やってみる価値はありますが、誰かに見守ってもらうか、レスキューの手配をお忘れなく。

あ、男性の皆様、これは女性にはさせないでくださいね。女性は幸せな状態のとき、モチベーションが上がりますから。

 


自分には最悪の結果を想像、他人にはまず相互理解から

p8上念 司 (じょうねん つかさ)

日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年より、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。2010年、米イェール大学の浜田宏一教授に師事。最新刊『歴史から考える 日本の危機管理は、ここが甘い 「まさか」というシナリオ

株式会社監査と分析Webサイト

自分のモチベーションの上げ方

私には「ネガティブシンキング」という独特のモチベーションアップ法があります。やり方は単純です。とにかく最悪の結果を想像しましょう。状況がリアルであればあるほど良いです。

例えば、ダイエットをしようと思った時、「このままでは病気になる」ではなく、「もうすでに病気になって何年も経ち、余命数ヵ月と宣告された自分」を想像します。そして、「あの時なぜ減量しなかったのか!」とリアルに後悔します。過去の自分のダメさを徹底的に責めてください。

後悔と絶望のどん底で、実はまだ自分が病気になっていないこと、努力しようと思えばいくらでもできることに気づきましょう。この瞬間、異常なモチベーションの高まりを感じるはずです。

他人のモチベーションの上げ方

他人に対して先ほど紹介した「ネガティブシンキング」をやってしまうと、おそらく人間関係は100%おかしくなってしまうでしょう。なので、他人のモチベーションの上げ方はもう少し違うやり方になります。

そもそも、モチベーションの低い人はその仕事がその人の人生においてどのような意味を持つのか自分でも分かっていないことがほとんどです。そこで、まずはその人の人生観を徹底的にヒアリングしましょう。次に、相手の価値観に従って今の状況を解釈して、相手に伝えます。おそらく少し議論になると思いますが、この議論こそが相互理解です。相互理解こそが信頼関係の大前提であり、それがないところにモチベーションは生まれないでしょう。

 


感情や気持ちに左右されずに継続できる環境を作る

p9石田淳(いしだ じゅん)

行動分析学をベースとする人材育成メソッド「行動科学マネジメント」の日本での第一人者。企業へのコンサルティングや著作、講演、セミナーなど幅広く活動。最新刊『挫けない力』は1月7日発売。

ウィルPMインターナショナルWebサイト

モチベーションは、感情や気持ちの問題だと思われがちです。しかし、「モチベーションを上げよう」などと考えること自体、実はムダなこと。必要なのは、感情や気持ちに関係なく継続できる環境を作ることです。

昨年4月に、サハラ砂漠を7日間かけて自給自足で250km走破するサハラ・マラソンという過酷なレースに出場しました。今年は南極アイスマラソンに出場予定です。ところが、日頃は忙しい上に、走る練習は決して好きではありません。寒い日は外に出たくない、と思ってしまいます。そんな自分の気持ちはひとまず無視して、「30分でも走ろう」と着替えてみます。一旦着替えれば、練習に出ていくものです。そして、継続していけばそれだけ力になります。

他人のモチベーションを上げるには、その人が継続できるよう、サポーターになることです。やったら褒めて、認めること、さらにやっているかどうかをチェックすることも必要です。難易度が高い場合は、その人ができるところまで細分化することも有効。面談などでしっかりコミュニケーションを取りながら進めることが大事です。継続の状況を客観的なデータなどの形で把握できるようにすれば、やがて本人が気付いて行動するようになります。

読書や早起きなどの習慣や学習の継続を支援するアプリなど、携帯電話やスマートフォンで使えるツールも多数あります。うまく活用して、気持ちに頼らずセルフマネジメントしましょう。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.226(2013年01月01日発行)」に掲載されたものです。

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