2006年9月18日
Q.シンガポール人の夫との離婚を考えている、日本人女性Aさんとシンガポール人弁護士の質問と答えです。
シンガポールでの離婚(2)
Aさん
シンガポールでの離婚の大体の手続きはわかりました。私の場合慰謝料はいくらもらえますか。
弁護士
シンガポールでは浮気に対する心の傷を償う慰謝料はなく、離婚での金銭については財産分与、妻の生活費、子供の養育費の支払いと言う項目です。個別の事情によって異なるので一概には言えません。結婚継続年数、夫婦の職業、収入、預貯金や不動産、株式、ゴルフクラブの会員権など含め一切の共同財産の内容、妻による共同財産形成への貢献度、妻が今後必要な生活費、などの要素を総合的に考慮します。なお、夫のCPFは離婚の時55歳以上でない限り財産分与そのものの対象にはなりませんが、共同財産の総額を考えるときに一つの要素として考慮されます。現在判明している限りで構いませんので財産リストを準備されて下さい。
Aさん
浮気相手の女性に対して慰謝料を請求できますか?
弁護士
浮気相手の女性を夫との共同被告と言うことで夫との離婚裁判において訴えることが可能です。但し、シンガポールでは相手女性から慰謝料を受け取ることは難しいと考えてください。もし認められても少額です。
弁護士
ところでお子さんは何歳ですか。監護養育権(Custody)は話し合いましたか。
Aさん
4歳と8歳で、子供は私が見ることで夫は同意しています。
弁護士
この点は争いがなさそうですので、養育費についてですが、現在の学費・養育費と、将来の見込みを出して下さい。領収書等資料も必要です。なお、養育費は再婚すると以降請求できなくなります。
Aさん
私は法廷には毎回出頭するのですか。通訳はありますか。
弁護士
ほとんどの場合は弁護士が代理人として出頭します。もし出頭を求められた場合通訳をつけることは可能ですが日本語は公式言語ではないため通訳人費用は原則自己負担です。
Aさん
シンガポールで離婚が成立すれば日本でも自動的に離婚したことになりますか。
弁護士
日本の法律では、夫婦のどちらかが外国人で、二人がある特定国に居住する場合、その特定国の法に基づいて行う離婚は常居所地法による離婚として有効なものとして認められます。したがって、日本人とシンガポール人の夫婦がシンガポールに住んでいる場合、常居地法であるシンガポール法による離婚を行うことができ、その離婚は日本法でも有効、ということになります。そこで、シンガポールで離婚が成立した後、日本で協議離婚など別途の手続きをする必要はありません。しかし、日本側へは報告的届出をすることを忘れないで下さい。日本側でシンガポールにおいて離婚が成立したことに基づいて戸籍に登録をする必要があります。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.082(2006年09月18日発行)」に掲載されたものです。
本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。