2025年3月18日
警察の詐欺対策センターを名乗る詐欺師に120万ドルを騙し取られる
シンガポールで、警察の詐欺対策センター(ASC)の職員を装った詐欺師によって、50代の女性が120万Sドルを失う事件が発生した。詐欺は2か月間にわたって行われ、政府職員を装う手口の一種である。
被害者の女性(仮名:ジェーン)は、3月14日に警察の手配でメディアの取材に応じ、詳細を語った。事件の発端は、2024年12月11日に「ASCの職員ジェニー」と名乗る人物からの電話であった。ジェーンの身分証番号が不正使用されているとして、警察への報告を促された。
その後、「警察官」と名乗る男“ヤン警部”に電話が転送された。彼は、ジェーンのIDがマネーロンダリングに使われた疑いがあると主張し、銀行口座の明細を提出するよう求めた。さらに、彼女の行動を1日4回報告し、事件の機密性を理由に誰にも話さないよう指示した。
12月13日、ジェーンは「警察」から送られた書類を受け取り、犯罪資金の洗浄容疑で起訴され、60日間の拘束を命じられると記載されていた。しかし、これは詐欺師が用意した偽の書類であった。12月14日、別の詐欺師“チョン警部”が登場し、ジェーンに50万Sドルを中国系銀行の口座に移すよう指示した。
12月18日から19日にかけて、ジェーンは9回に分けて合計18万Sドルを送金した。12月20日には、中国系銀行が疑わしい取引を理由に彼女の口座を凍結。その後、チョン警部は口座を閉鎖し、残りの32万Sドルを現金で引き出すよう命じた。ジェーンは公園で「捜査官」を装う男と待ち合わせ、現金を手渡した。
その後も詐欺師に現金を渡し続け、2025年1月3日までに総額120万Sドルを失った。詐欺師たちは「高等法院で審議中」と嘘をつき、金の返還を引き延ばしたが、1月24日以降、連絡が途絶えた。彼女は体調が悪かったこともあり、2月6日に警察へ通報した。
シンガポール警察によると、2024年には1,504件の政府職員を装った詐欺が報告され、被害総額は1億5,130万ドルに上る。特に50~64歳の被害者が多く、電話やWhatsAppを通じて詐欺が行われた。警察は「ASCの職員やScamShieldの関係者を装う詐欺が増えている」と警告し、個人情報を電話やメッセージアプリで提供しないよう呼びかけている。