2005年4月18日
Q.シンガポールにおける年金制度及び社会保険制度について説明してください。
年金制度および社会保険制度
日本の社会保険制度に相当するシンガポールの制度には、中央積立基金制度(CPF)、付加退職金制度(SRS)及び労働者災害補償保険があります。
- 中央積立基金(CPF)
- CPFは、主として被用者の退職後の生活のための財形貯蓄制度として設立されました。シンガポール国内で就労する被用者及びその事業主は、報酬について所定の拠出率(2005年1月1日現在50歳以下の被用者について被用者20%及び事業主13%、月額給与S$5,000を最高限度とする)をCPFの被用者名義の口座に拠出することが義務づけられています。拠出金については、税務上の所得控除(被用者)及び損金算入(事業主)が認められます。自営業者の場合には、CPFの医療費口座への拠出(35歳以下の場合、税務上の事業所得の6%)のみ義務づけられていますが、それ以上の金額を任意に拠出した場合には、所定の限度額(2005賦課年度についてS$21,780)までの拠出金について所得控除が認められます。
CPFはシンガポール国民及び永住者を対象にしており、シンガポール国籍又は永住権を有しない外国人が拠出することはできません。拠出金は、用途別に以下の3口座に分散して貯蓄されます。
- 普通口座-住宅購入、投資目的の金融商品購入、教育ローン等
- 特別口座-老後の生活資金
- 医療口座-入院費用、出産費用、その他所定の医療費の支払い等
- 加入者が55歳に達すると、原則として各口座毎に定められた最低維持額を超える金額については自由に引き出すことができます。
- 付加退職金制度(SRS)
- SRSは、CPFに上乗せする財形貯蓄制度として設立されました。21歳以上で事業所得又は雇用所得があれば、誰でも任意にSRSに拠出することができます。ただし、事業主が被用者のSRS口座に拠出することはできず、個人による拠出のみになります。拠出金には限度額が設定されており、被用者の場合、拠出限度額は、前年の雇用所得(通常賃金について年間$60,000、総賃金について年間S$85,000を最高限度とする)の15%(シンガポール国民又は永住者)又は35%(外国人)とされています。拠出金は全額所得控除が認められ、CPFに加入できない外国人に対して補完的な機能を有する制度となっています。
- 労働者災害補償保険
- 労働者災害補償保険は、就労に起因する労働者の障害及び疾病を補償するための保険です。事業主は、作業に従事する労働者(賃金の金額を問わず)及び月額賃金S$1,600以下のその他の労働者について、労働者災害補償保険に加入する義務があります。
- その他
- CPFの医療費口座以外に日本の医療保険制度に相当する制度はなく、医療費は、原則として全額自己負担です。但し、シンガポールの雇用主の多くは、福利厚生の一環として従業員の医療費の一部又は全部を負担しています。又、日本の雇用保険に相当する制度はありません。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.040(2005年04月18日発行)」に掲載されたものです。
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。