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会計・税務相談

2005年7月11日

Q.当社は、日本の会社のシンガポール子会社です。配当に関する税務上の取り扱いがインピュテーション制度からワンティア制度に代わりましたが、インピュテーション制度による配当の期限である2007年12月31日までにセクション44残高を全額親会社に配当した方がよいでしょうか。

配当に関する税務上の取り扱い

シンガポールでは、これまで配当の支払いについてインピュテーション制度が採用されていました。これは、法人の利益は資本を出資した株主に帰属するものであり、法人税は株主が受け取る利益に課せられる税金の前払いに過ぎないという考え方です。従って、配当が株主に支払われた場合、株主の配当所得は、株主に適用される税率で計算された税額から、配当利益に対応する納付済法人税が配当税額控除として控除されます。

 

この制度は、税金の再計算や還付手続きに手間がかかり、又、配当可能な剰余金が法人税納付済利益に限定される(セクション44残高)等の問題があるため、2003年1月1日より、法人税を法人利益に対する最終的な課税とし、配当については免税とするワンティア制度が導入されました。2002年12月31日現在のセクション44残高については、2007年12月31日までインピュテーション制度による配当が引き続き認められています。

 

インピュテーション制度による配当とワンティア制度による配当では、株主にとって以下のような差異があります。

 

  • シンガポール居住者の個人株主
  • 個人所得税の実効税率は、通常、法人税率よりも低く、インピュテーション制度による配当では、個人所得税率と法人税率の差異について税金が還付されますが、ワンティア制度では還付がなくなり、ワンティア制度に移行した場合、税負担額は増加することになります。
  • シンガポール居住者の法人株主
  • 配当所得にから控除できる損金がない場合には、どちらの制度による配当も税負担額は同額になります。但し、投資のための資金を借入により調達し、利息が発生しているような場合には、インピュテーション制度では借入利息を損金算入できますが、ワンティア制度では所得が免税となるため損金処理できず、ワンティア制度に移行した場合、税負担額が増加することになります。
  • シンガポール非居住者の個人及び法人株主
  • シンガポール非居住者の株主の場合には、株主は配当所得についてシンガポールでは課税されず、配当を受け取った国で課税されます。上述のインピュテーション制度における配当税額控除や対応する損金の算入は、シンガポールで課税されない非居住の株主には関係ありません。非居住者の株主の場合、どちらの制度による配当も税負担額は同額になります。尚、法人株主で持株比率等の一定の要件を満たす場合には、どちらの制度による配当であっても、配当支払会社が納付した法人税について外国税額控除(間接税額控除)の適用を受けることができます。

 

一般に、株主がシンガポール居住者の場合には、セクション44残高を使いきった方が株主に有利になる場合が多く、株主が非居住者の場合には、セクション44残高を使いきる前にワンティア制度に移行しても株主には影響がないと言えるでしょう。

取材協力=Price Waterhouse Coopers

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.052(2005年07月11日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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