日本の税法は属人主義に基づいており、日本の居住法人は全世界所得について課税されます。従って、日本の会社がシンガポールに支店を設立した場合、支店利益は本社の課税所得の一部として日本で合算課税され、欠損金は本社の課税所得から控除されます。
これに対して、シンガポールでは属地主義が採用されており、シンガポール源泉所得及びシンガポールに送金された国外源泉所得が課税対象所得となります。従って、国外源泉所得であるフィリピンの支店利益は、シンガポールに送金されなければシンガポールでは非課税扱いとされます。
又、支店利益がシンガポールに送金された場合であっても、2003年6月1日より、以下の要件を満たす場合には免税扱いとされています。
- 送金された国外源泉所得が送金元の国で課税されていること
- 送金時における送金元の国の最高法人税率が15%以上であること
- シンガポール居住者が免税の受益者であること
上述の免税措置は、支店利益の他に配当及びサービス所得についても適用されます。
フィリピンの現行の最高法人税率は32%ですので、フィリピンで課税済みの支店利益がシンガポールに送金された場合には上述の免税要件を満たすことになり、フィリピン支店から送金された利益はシンガポール現地法人の税務申告において課税所得に含められません。
次に、支店がフィリピンで納付した税金についてシンガポールで外国税額控除の適用を受けることができるかという点ですが、外国税額控除は、同一の所得が源泉地国とシンガポールで二重に課税されるのを防ぐことを目的としています。支店利益がシンガポールで免税扱いとされる場合にはフィリピンのみで課税され、フィリピンとシンガポールにおける二重課税は発生しませんので、シンガポールで外国税額控除の適用を受けることはできません。フィリピンにおける納税額が支店利益にかかる最終的な税額となります。