シンガポールを地域ハブと位置づけ、ASEAN諸国、インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、モルジブ、イランを統括している沖データ・シンガポール。同社製プリンターのターゲットはいわゆるSME(中小企業)で、ランニングコストが低く、印刷速度がきわめて早いのが特徴。来年、主力プリンター「C3100」の改良機を発売する予定だという。
「イランの販売代理店によるドットプリンターの委託生産受注など、大きなプロジェクトも進行中です」と語る同社社長の斎木宏之氏が、30年近く前、新入社員として手がけたのがシンガポール向けテレックス交換システムの販売。初の海外出張もシンガポール。新婚旅行も奥様の意向でシンガポール・ペナンの旅と「シンガポールにはなぜか縁がありました」と笑う。
海外勤務はアメリカ、タイに続き3度目で、シンガポールではご子息との生活。「フラットメートのように」仲良く暮らしている。先日、久しぶりに家族4人が集合。そこで2泊3日のクルーズ旅行に繰り出したが、「目的地なり寄港地があると思っていたら、ただ公海上を巡っただけ」。斎木氏がせっせとギャンブルで稼いだお金で、女性陣はショッピング。
「結果的にいい家族サービスになりました」
探究心旺盛な斎木氏は、当然おいしい店を探すことにも余念がない。シンガポールではすでにローカルフードにも造詣を深め、おいしいバクテーの店にも詳しい。自称「雑食・雑飲」タイプ。好き嫌いがなく、香草パクチーも大好物と、まさに海外営業生活に必須の柔軟さを持つ。バンコク駐在は3年5カ月。その間、タイ語のレッスンを4カ月受けた。社内では基本的に英語でのコミュニケーションだったが、日常会話はタイ語でこなす。タイ料理も大のお気に入り。
しかし、そんな適応力を持ってしても「インドの洗礼」からは逃れられなかった。それは初めてインドを訪れた人をまず間違いなく襲うという下痢、腹痛。「日本人の体が、遭遇したことのない菌が存在するみたいで、初めての訪問でどんなに気をつけていても、まずおなかを壊します。耐性がつくのか、2回目からは大丈夫でした」と体験を語る。
出張では、イランの首都テヘランの印象が強い。怖れを感じるほどの人の波と、驚異的な交通渋滞に圧倒された。交通ルール無視のほぼ無法地帯で、ジェットコースター最前列のスリルが味わえる。エジプトのカイロもひけを取らないが、カイロでは笑って楽しめる余裕がある。「あの辺りの国はみな混沌としていて、自分の世界観とはかけ離れていて驚くことが多いですね」と苦笑い。
初の駐在地だったせいか、「やはりアメリカには影響を受けた」と言う斎木氏は、「アメリカ人は結構温かくて、実は浪花節的な感覚が通用するんです。お前だからやってやる、みたいな感じです。今でも連絡を取り合うほどの友人がいます。アメリカでは異業種の日本人の友人もたくさんできました」と当時を振り返る。
「主徳従才」を身上とする斎木氏ならではの交友関係の深さだが、「妻が社交的なので」と内助の功もさりげなくアピール。
ニュージャージー州郊外での生活で、休暇のたびに家族でアメリカ全土を車で駆け巡った。カナダからフロリダにカリブ海まで、西海岸にグランドキャニオンと、アメリカの観光名所はほぼ制覇の勢いだ。
趣味も多彩で、「何でもそこそこやらないと気がすまない」。「ただ、ある程度やると目移りするんです」と付け加えるが、タイ時代にはゴルフにのめりこんだ。自由になる時間はたっぷりあった。週末はゴルフ、接待もゴルフ。年間百ラウンド近かったというからすごい。そのつどパソコンでスコアを記録するというのが斎木氏の几帳面さを表している。シンガポールではコンペ以外でゴルフの機会になかなか恵まれないが、「是非声をかけてください」と目を輝かせる。
暮れの一時帰国が今から楽しみ。「民放のCMが新鮮で」という斎木氏。海外駐在の長い方には共感される向きも多いだろう。