2013年2月4日
Q.シンガポールにおける税務上の居住法人と非居住法人の違いについて教えてください。
税務上の居住法人と非居住法人の違い
納税者は、税務上、居住者と非居住者に分類されます。居住者かどうかの判定は、それぞれの国の税法により異なり、また、個人と法人によっても異なります。日本では、法人の居住者の判定について本店所在地主義を採用していますが、シンガポールでは管理支配地主義が採用されており、管理支配がシンガポールで為されている場合に居住法人と判定されます。
「管理支配」の定義について所得税法には具体的に記載されていませんが、通常、会社の意思決定機関である取締役会がシンガポールで開催されているかどうかが重要な判定基準の一つとなります。
シンガポールは60ヵ国以上の国と租税条約を締結しており、シンガポール居住法人が条約相手国で得た所定の所得については、租税条約に基づき相手国で所得税の軽減または免除が適用されます。この適用にあたり、相手国の税務当局は、通常、所得の受益者がシンガポールの居住者であることを証明する文書の提出を義務づけています。シンガポール内国歳入庁(IRAS)は、居住証明書の発行に関して以下のような要件を定めています。
- 名義貸会社(実質株主の代わりに株式を保有する目的で設立された会社)でないこと
- 株主の50%以上が外国人で、かつ受動的所得または国外源泉所得のみを得る投資持株会社の場合、以下の要件を満たすこと:
取締役会がシンガポールで開催されていること、かつ、以下の要件のうち 1つ以上を満たすこと:- 税務上の居住法人または事業会社である関連会社がシンガポールにあること
- シンガポールにある関連会社から支援または管理サービスを受けていること
- 1名以上の常勤取締役(名義取締役を除く)がシンガポールに居住すること
- 1名以上の業務執行役員(CEO, CFO, COO等)がシンガポールに居住すること
- シンガポール国外で設立された会社または外国会社の支店の場合、管理支配が実際にシンガポールで為されていることを証明し、かつ本国で管理支配が為されない正当な理由がある場合に限られる
居住法人であっても非居住法人であっても、法人税率等の基本的な税務上の取り扱いに違いはありませんが、以下のような点において取り扱いが異なります。
- 非居住法人が所定の所得(利子、使用料、動産賃貸料、経営管理料等)を受け取る場合には、源泉徴収税が徴収される
- シンガポールと租税条約を締結する国において、条約に基づく所得税の軽減または免除の適用を受けるには、シンガポールの居住者でなければならない
- 外国とシンガポールの両方の国における二重課税を排除するための外国税額控除および片務的外国税額控除は、居住者のみに適用される
- シンガポールで受け取った国外源泉の配当、支店利益およびサービス所得について所定の要件を満たす場合に免税とする制度は、居住法人のみに適用される
- 所定の要件を満たす新設会社に対して設立後の3賦課年度にわたり最初のS$100,000までの課税所得について免税とする制度は、居住法人のみに適用される
取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.)
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.228(2013年02月04日発行)」に掲載されたものです。
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。