2年目を迎えるアルビレックス新潟・Sに大塚一朗新監督が就任してようやくひと月半。大塚監督にとって、来星は大学時代のサッカー遠征以来、今回で2度目。その時の好印象は記憶に残っており、長年拠点にしてきた地元富山を離れる時も特に抵抗はなかったという。現在、2人の息子さんはロンドンにてサッカー留学中で、奥様もロンドン在住のため単身で渡星。
大学卒業後、古河電気工業に入社し、現在のジェフユナイテッド市原・千葉の前身である社会人チームでサッカーを続けた。当時このチームには岡田武史氏や奥寺康彦氏も所属していた。選手引退後、コーチ留学でイギリスへ。「5代目若旦那として水産業の家業を継ぐ前の、自分探しの旅でもあった」と、当時を振り返る。その後、イングランド・サッカー協会の最高資格であるアドバンス・ライセンス(UEFA-A)を取得。
アルビレックス新潟・Sとの巡り合わせには運命めいたものがあった。
試合観戦中にアルビレックス新潟の神田強化部長に偶然会い、自分の意向を伝えたところ、前監督辞任のタイミングと重なり、今のポジションの話が持ち上がった。アローズ北陸のコーチや富山県内の国体女子チーム監督など幅広い指導経験を活かして海外で試してみたかったので、もちろん快諾したとのこと。 アルビレックス新潟・Sの選手の平均年齢は約20歳。未知数の可能性を秘めた若い選手達だ。そんな選手達にどんな指導をしているのかを伺った。
「選手達には絶対負けるな、と言います」ときっぱり。無論、試合に勝つこと。試合に勝つためには、まず自分との戦いに勝つこと。また試合に負けたら勝つために努力するよう自分を盛り上げること。そして監督のこのチャレンジに勝つこと。「若い有能な選手達に個々の技術指導をする必要はないが、彼らはもっと“サッカーを知る”必要があると思います。だから試合運びやかけ引きをひとつひとつ教えています。」それは試合経験を積むだけで習得できるものではないらしい。試合に勝つために必要なイメージ作りの機会が生来少なかったことも影響しているそうです。イギリスなどに比べると、我々日本人にとってサッカーはまだ若いスポーツ。子供の頃からプロ野球を見て育ち、ゲッツーやピッチャーのかけ引きなどを大人が得意げに解説するような環境が日本のサッカーにはないことを挙げた。そのためイメージ作りを十分補えるような練習メニューを日々考えている。
その対極にあるチームが、昨年優勝したタンピネス・ローバーズFC(※1)。平均年齢が約30歳ということもあり、経験豊富な選手が多い。彼らは試合でのかけ引きが抜群に上手い。また、イメージ作りといえば、ウッドランド・ウェリントンFCは、元リバプールの監督を迎え、毎回試合中にビデオを使用し、ハーフタイムに選手達に試合分析を見せて指導しているそうで、究極のイメージ作りをしている。今年は昨年2位のホーム・ユナイテッドFC(※2)の他、各チームとも個性的で実力差で簡単に勝負がつかない状況が予想される。だからこそ、チームの個性をいかして勝負に臨む必要があると語る。
「相手によってその都度戦略を変えるのでなく、自分のサッカーを確立することが大事。それはチームにとっても選手にとっても言えること」という。選手には異なるポジションをどんどん試させている。一つのポジションにこだわることなく、可能なら違うポジションもマスターさせ、将来どこのチームでもプレーできる選手に育てたいという親心も。
兄貴分のような頼れる存在感がある大塚監督。若いチームを技術面、精神面でもしっかり支えて今年のアルビレックスをまとめていくに違いない。
2005年、Sリーグのシーズンを目前に控え、練習試合の成果も上がっている。
最後に在星日本人の皆さんへのメッセージは?「是非優勝したいです。そのためには皆さんサポーターの応援が必要です。一人でも多くの方に試合を見に来て欲しいです」
勢いづけば飛び立つように力を発揮できるのがチームの強みでもある。新生アルビレックス新潟・S、今年は一層目が離せない。