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ビジネスインタビュー

2005年9月5日

「チャレンジ&スマイル」進化し続けるネットワークで世界のNTTへ

NTTシンガポール President & CEO Regional Executive Officer 三上哲郎さん

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2004年7月に三上氏が来星して以来、NTTシンガポールは、地域統括会社としてマレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ、オーストラリアの現地法人を傘下においた。2005年の上半期の時点で、昨年実績から4割増収と黒字転換を実現した。アメリカに次いで2度目の駐在とはいえ、この新天地で揮う三上氏の手腕の程にまず驚かされる。「3年で全体の実績を3倍に伸ばすという約束ですから」と、あくまでもプロセスに過ぎないことを氏は強調した。

 
NTTが提供するネットワークは、アジア・太平洋地域での充実のみに留まらず、今やグローバルをカバーする最大級のものとなった。また、セキュリティ管理やサーバー管理を含めたITサービスも高い水準を誇る。その技術力、安全性、サービスの質の高さで、ベストグローバルキャリア賞やベストアジアンテレコムキャリア賞など世界的に権威ある賞を過去二年で次々と受賞した。IPバブル崩壊後、欧米の通信大手が軒並みに業績を落とし、アジアからの撤退や倒産がささやかれる中、「これからも付加価値の高いオンリー・ワンのネットワークとトータル・ソリューションを提供していきます。」と、三上氏はあくまで攻めの発想だ。

 
そこで三上氏が実行しているのが、経営方針の革新的なパラダイムシフトである。その1つがお客様層の転換。従来NTTシンガポールは、東南アジアに進出している日系企業を中心に日本並みの品質の高いサービスを提供してきた。

 
今後は、アジア随一のグローバルキャリアとして、外資の多国籍企業へも積極的にビジネスを展開する。 2つ目は商品やサービスの転換。これまでの単独の商品やサービスを提供する動きから、MPLS(マルチプロトコルラベルスイッチング)IP—VPN(仮想専用回線)のような付加価値の高いネットワークを核にして、システムインテグレーションやデータセンタ、ITシステム管理等を組み合わせた、トータル・ソリューションに重点を置く。

 
3つ目はパートナリング。先日のNEC社とのIPテレフォニーで提携した例にあるように、優れた技術やソフトを持つ企業と協業することで、より質の高いサービスを顧客に提供しようというものである。

 
広告や営業活動に莫大な予算を投じることなく着実にマーケットを拡大しているのは、「長年日本で厳しい競争環境にあり、お客様の品質や信頼性などに関する高度な要求条件に対して、リーズナブルな価格でサービスを提供できる様に努力して来た結果、世界レベルの競争力が備わっていたということです。」と三上氏は語る。受注してからのタイムリーなサービス提供、運用・保守などの充実したお客様サポートにより、時には外資系の企業から驚かれながらも、確実に顧客の信頼を勝ち得ているという。

 
三上氏は、入社以来の革新的な行動力と実績で、社内の若手社員からの信頼も高い。「NTTの歴史と実績、そしてお客様との信頼関係。それがあってこそ、今の自分がある」とこれまでを振り返りながら、「会社ではブルドーザーと言われてます」と豪快に笑う。
学生時代のテニスコーチの経験から信条となった「チャレンジ&スマイル」。辛く苦しい時こそ笑うことが大事、また現状に甘んずることなくチャレンジするという適度なストレスが自分を高めるというもの。三上氏自身がそれを見事に実行している姿にこそ、真のリーダーシップがあり、部下も実績もついてくるという好循環がある。

 
シンガポールの本社では、三上氏自ら毎朝社員誰もが気軽に参加できるアーリーバード・ミーティングを開き、日常の出来事に耳を傾けている。カリスマ幹部と呼ばれながら、身近な存在であることが周囲から慕われる由縁だろう。「いつも早寝早起きを心がけてます。会社に行くのが楽しみでしょうがないんです、スキップして出かけるくらい」と、聞き手を圧倒するほどの三上氏の笑い声がオフィスを駆け抜ける。

 
1970年代の激動する社会環境の中で多感な青春時代をおくり人生のどん底を見た、と語る三上氏。例え苦境に立たされても、失うものは何もないと笑う。NTTを名実ともに世界のブランドとして確立する立役者のパワーと情熱の源を垣間見た気がした。
建築家である奥様と既に成人した二男一女を日本に残し、シンガポールには単身で駐在している。余暇には以前から興味のあった油絵を習い始めた。なかなかの腕前で、オフィスに作品が並ぶ。社員が品評に立ち寄ることも多い。

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NTTシンガポール
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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.058(2005年09月05日発行)」に掲載されたものです。
文=桑島千春

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