2006年3月20日
Q.シンガポールは罰金の国で、法律も厳しいということで有名ですが“家の中でも裸になっていれば犯罪である”という法律があるというのは、本当ですか。
家の中でも裸でいれば犯罪?
結論から言うと、シンガポールの法律で家の中で裸になっていることが犯罪となる場合がある、という規定があるのは本当です。しかし、家の中で裸になっている人の全てが犯罪人として逮捕される訳でないのは当然で、これは法律の定める条件に当てはまる場合に限ります。
まず、裸になることを犯罪として定めているのは“Miscellaneous Offences (Public Order and Nuisance) Act”という法律で、この法律は他にも日常の生活における細かなルールを定めています。シンガポールでいわゆる「刑法」は、“Penal Code”という別の法律として規定がありますので、上記の法律は、日本で言うところの軽犯罪法、あるいは迷惑防止法(又は条例)のようなものと考えて頂いてよいかと思います。
法律の定める条件にあてはまるのがどのような場合かについては、27A (1) 条において公共又は私的な場所にて裸になる罪(Appearing nude in public or private place)として定められています。同法の要件は、“Any person who appears nude – (a) in a public place; or (b) in a private place and is exposed to public view shall be guilty of an offence ” とあります。
つまり、(a)で は、公共の場所で裸になることを禁じており、加えて(b)では、公共の場所ではなく自宅などの私的な場所であっても、外から第三者が見ることができるような場所で裸になることを禁じていて、これらが認められる場合は犯罪とみなされます。
(b)の例としては、自宅のコンドのバルコニー、寝室の窓際などでしょうか。これらが向かいの他人の住宅や公共の道路に面していて人目に付くような場合です。もちろんカーテンなどで外から見えなければ問題はない訳ですが、うっかりして思わぬトラブルにならないよう注意が必要です。
この犯罪を犯した場合の刑は、罰金が2000ドル以下、又は、3カ月以下の禁固刑、又は、その両方を科されることがあります。
このような法律が果たして実際に適用されるケースがあるのか、と思われる方もあるかもしれませんが、最近起きた事件で、あるHDBフラットの居室内で男性が裸になっていることが複数の近隣住民によって目撃され、警察に通報されるというケースがありました。通報を受けた警察官の調査で、1カ月の間に少なくとも6回そのような事実があったことが確認されたため、この男性は上記の法律に基づいて逮捕されました。
シンガポールは狭い国で高層住宅が密集して立つという特徴があります。また多民族国家であって多様な価値観が存在します。そんなシンガポールでは、皆が気持ちよく暮らせるようにするために、迷惑行為を規制する法律が厳しく定められているのです。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.070(2006年03月20日発行)」に掲載されたものです。
本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。