大きく分けて「商標法に基づく商標権侵害」と「パッシングオフ」という2つの請求があります。本日は小職の担当秘書とオーチャードを歩きながら解説します。
秘書:
少しお腹すきました。SUBWAYでも行きましょうか?パラゴンが近いからSUBWAY NICHEでもいいですけど。
木村:
そうだね。しかし、「SUBWAY」と「SUBWAY NICHE」とは。訴訟になった事件があったなあ(Doctor’s Associates Inc v Lim Eng Wah [2012] 3 SLR 193)。SUBWAYはご存知のとおり米国のサンドウィッチチェーンでシンガポールにもたくさん店舗があるよね。SUBWAY NICHEは1987年にシンガポールでオープンしたローカルスナックやサンドウィッチを販売する店舗。SUBWAYがSUBWAY NICHEを訴えたのだけど、裁判ではまずマークが似ているかを、外観、呼称、観念という3つの観点から判断するんだ。商標権侵害が認められるには、商品(サービス)の類似性も必要。この事件で裁判所は、外観、呼称、観念は似ていて、商品も類似するとしながら、混同のおそれがないという理由で原告の請求を棄却したんだ。原告は、被告店舗と間違えて店舗に来た者がいたという従業員の証言を証拠としたけど、裁判所は納得しなかったわけ。
秘書:
そうなんですか。さて、休憩もしましたし、IONへ寄ってルイヴィトン(LV)の財布とCity Chainの時計も見たいです。
木村:
秘書:
なるほど、勉強になります。ところでこの後、カラオケでもいかがですか?オーチャードプラザのミラージュご存知ですか?
木村:
その「ミラージュ」にもケースがあるよ(Chong Peter v Triple 8 Enterprise Pte Ltd [2010] SGHC 9)。原告(Chong Peter)は「神话 KTV and DISCO PUB」という登録商標を持っていて、被告による「Mirage 神話 Palace Exclusive Niteclub」の使用について商標権侵害とパッシングオフを主張したんだ。裁判所は両マークについて「Shen Hua(神话、神話)」で呼称は似ているとしつつも、外観、観念は似ておらず、さらに被告店舗は原告店舗と比べて高級志向で利用者層が異なるから、混同のおそれはないと認定したんだよ。また、事業開始した2005年と2006年の売上記録や広告宣伝の証拠がなく、原告のマークはパッシングオフに必要な「信用」(顧客吸引力)を獲得していないとして、裁判所はパッシングオフの主張も否定。パッシングオフを使うには立証が大変だね。
秘書:
私たちの身近なところで、いろいろな事件があったんですね。