経営戦略コンサルティングファームのコーポレイト ディレクション(Corporate Directions, Inc./CDI)が2012年4月、シンガポールにCorporate Directions, Inc.(CDI) Asia-Pacific Pte. Ltd.を設立した。
トップの意思が如実に組織に反映されやすい外資系の大企業に対し、日本の大企業はトップ層だけでなく中間管理職も組織をつくりあげる。CDIは欧米の合理的経営戦略思考を日本の企業文化に融合させることを基本理念とし、経営戦略コンサルティングを行う。
すでに上海、タイ、ベトナムに支社を持っていたCDIにシンガポール支社設立を提案し、CDIアジアパシフィックのディレクターを務めるのが、小島隆史さん。
「アジアを国ごとの『点』で考えるだけでなく、地域として『面』でとらえ、ハブとなる拠点が必要と考えて、シンガポールに事務所の設立を提案しました」。
CDIアジアパシフィックは主に日系企業の顧客向けに経営計画立案・実行支援、市場調査、M&A(企業買収・合併)、そしてアジアへ進出を考えている企業のためのコンサルティングなどを行う。
「日系企業がアジアへ進出する場合、現地の会社を紹介されたから提携するというような、出会い頭的な進出のケースが多い。そこで当社が綿密な事業計画を作成します。アジアの国はそれぞれ経済構造が異なり、進出の際に独資がいいのか、合弁がいいのか、直販か、代理店経由かなどを考える必要があります」。
M&Aに関しても、アジアの特徴があるという。
「アジアでのM&Aに関していえば、すでに案件ありきということが多い。本当にその会社を買うべきなのか、中・長期の経営戦略の中で必要なのか、検討すべき“ものさし”が定まっていないケースがめだちます。この場合、そのものさしをつくるのが私たちの仕事となります」。
経営戦略を組み直すため会社のすべてを変える
シンガポールでは、すでにアジアへ進出し、シンガポールに拠点を置く会社の経営戦略を組み直すという案件が多い。
「アジアでのビジネスにおける経営戦略を組み直す場合、戦略と同時にその企業をすべて変えることになります。戦略に応じて、人事(採用・報酬制度)、営業、情報システム、組織体制のすべてをワンセットで変える必要があるからです。こうした見直しは、思うような業績が出ない場合に行うとは限りません。会社として業績が伸びていたとしても、市場はもっと成長していることがあるのです。アジアの市場成長に見合った業績の成長、売り上げを達成しているのかを考えなくてはいけません。例えば製造業が先進国におけるシェアだけを追い、新興国に注力しなかった結果、いつのまにかグローバルな競争に取り残されてしまっていた、ということもありえるのです」。
案件を担当するCDIの担当者は、特定の業界についての経験や専門的な知識を持ちつつ、ほかの業界にもちゃんと目を向けている。
「例えば、私のように製造業の案件を多く経験しているということはありますが、業種ごとに担当が固定化しているということはありません。いろいろな業界の動向に注意し、今、ある業界で起きていることが、数年後には違う業種で起きる可能性があると、アドバイスできるようになることが重要です」。