2016年1月18日
営業力編 第1回 今の時代、「売り込む営業」は通用しない!
日本では高度成長期もバブル期も過ぎ去り、特にリーマンショック以降は「モノが売れにくい」と言われて久しい時代なので、今も営業マンにとって大変厳しい時代と捉える方は多いのではないでしょうか。しかし、私はそうは思いません。こうした時代背景をしっかり理解して、今の時代に求められる営業スタイルに転換することができれば、今こそ営業マンにとっては結果を出す絶好のチャンスとなるからです。
では、今の時代に求められる営業とは何か?今回は、時代背景を踏まえながら、今の時代で結果を出せる営業スタイルについてお話します。
「モノが売れにくい」と言われるようになった第1の背景は、競合の激化。今は似たような商品やサービスが、似たような価格で買える時代です。昔なら営業マンやその道の専門家しか知り得なかった情報が、今や一般の人でもインターネットで調べて簡単に入手できるようになりました。そのため、競合といえば国内だけでなく、世界中にまで広がっているのが実情です。
そして第2の背景は、価値観の多様化。今のお客様は“本当に必要なもの”しか買ってはくれません。情報過多、かつ商品過多の中で、お客様の購入時における選択眼は年々厳しくなっています。以前のようなお付き合いで商品を買ってもらう一種の営業手法は、もはや通用しないといってもいいでしょう。
こうした時代背景がある中で、昔ながらの「売り込む営業」スタイルでは結果がでないことは目に見えています。当時の営業スタイルにおいて、最も注力すべきセールスプロセスは最後、つまり「クロージング」であるとされていました。私も営業を始めた頃、いかにして相手に“Yes”を言わせるかのトレーニングを集中的に受けたことを思い出します。しかし、クロージングを一生懸命にしていては、かえってお客様は逃げてしまいます。お客様は「売り込まれている」と感じた途端に、営業マンに対して“心のシャッター”を閉ざしてしまうものです。
ですから、今の時代は昔と逆で、セールスプロセスの前半が重要です。つまり、提案からクロージングに至るまでに「お客様といかに強い信頼関係を築くか」が大切になるのです。前述のとおり、商品やサービスでの差別化は非常に難しい。だからこそ、お客様と営業マンとの信頼関係の強さや絆の深さが、結果を出せるか否かの分かれ道となります。
ここまでお話すれば、皆さんももうお分かりでしょう。今の時代に営業で結果を出すためには、こちらから売り込むことなく、お客様から「選ばれる営業マン」になる必要があるのです。
お客様から選ばれることとは、こちらから一方的に相手に迫ることではなく、お客様といわば「相思相愛」の関係を築くことです。そして、相思相愛になるためには「相手の役に立つこと」「相手の問題を解決すること」が大切です。
まず「相手の役に立つ」ことに注力して、あなた自身の付加価値を上げる。その結果として、「この商品やサービスだから買いたい」とか「この会社だからほしい」ではなく、「あなただから買いたい」と言われるようになるでしょう。そうして「選ばれる営業マン」になれたならば、あなたはいつでもどこでも、何を扱っても、トップの営業マンになれるはずです。
次回からは、「お客様と信頼関係を築く」ということにフォーカスして、その信頼関係を築くための「3つの極意」をお話しします。お楽しみに!
小林 一光(こばやし いっこう)
株式会社アイ・タッグ代表取締役。プルデンシャル生命在籍時に営業マンとして売上日本一、マネージャーとしてチーム日本一という偉業を達成。現在は研修・講演・執筆活動を通じて、結果を出す人材や企業を輩出している。主な著書に『世界最高位のトップセールスマンが教える営業でいちばん大切なこと』『チームで最高の結果を出すマネジャーの習慣』など。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.295(2016年1月18日発行)」に掲載されたものです。