2016年6月6日
営業力編 第3回 顧客と信頼関係を築くためのコミュニケーション(前編)
前回、顧客と信頼関係を構築するためのポイントとして挙げた「3つの極意」の中から、1つ目の「4つの自信」についてお話ししました。今回はその2つ目となる「顧客とのコミュニケーション」についてお伝えします。顧客と信頼関係を構築するためには、コミュニケーションが不可欠です。しかしコミュニケーション次第では、顧客との信頼を構築するどころか、関係性を悪くしてしまうこともあります。そこで、コミュニケーションで大切なことは何か、いくつかお伝えしていきます。
最初にコミュニケーションの基本についてです。それは、こちらから話すことではなく、まずは相手の話を聴くということです。営業の現場だと、ついこちらから一方的に話してしまうこともあると思いますが、人は話すことと聴くことのどちらが好きかというと、圧倒的に話すことが好きな方が多いのです。それゆえ、自分が話すことで相手にストレスを与えるのではなく、あくまでも相手の話を聴くことが大切です。
そして相手の話を聴くときの姿勢も重要です。聴くという字は「耳+(プラス)目と心」と書きますよね。耳だけでなく、目と心で真摯に相手の話を聴くことを心がけましょう。例えば相手の目を見てしっかりうなずく、時には相槌をうち「それはすごいですね」とか「さすがですね」といって褒めること。すると相手は自分の話を「しっかり聴いてくれた=認めてくれた」と思い、あなたに対して好印象を持つことでしょう。
また、相手との共通項を探してその話題で盛り上がることも大事です。出身地や出身校が一緒、趣味が同じなど、何か相手と共有できることを探すことができれば、その話題でおのずと盛り上がりますよね。同時に、相手が関心のあることに自分も注目し、話題を共有することもポイントです。この「相手が興味を持っていることに同じく注目する」ことが大切で、その「相手自身に関心を持つ」ということとは違うことを理解してください。
例えば私に対して初対面の方が「一光さん、書籍をたくさん出されていますが、本を出すにはどうすればいいのですか?」とか、「一光さん、何で前職をやめて独立されたのですか?」と質問してきたとしても、私自身があまり興味のある話題ではない場合には返事はそっけなく、話は盛り上がらずに終わり、その距離はなかなか縮まらないでしょう。そうではなく、私自身が興味のある話題であれば、こちらは楽しく話せるし、それをしっかりと受け止めて聴いてもらえたら、その聴いてくれた相手に対して好印象を持ち、距離は確実に近くなります。このように、「相手自身に関心を持つ」のではなく、「相手が興味を持っていることに注目する」ことはとても大切なことなのです。
さらに、相手と話題を共有する中で、何か一つでも自己開示をしてみることも良い方法です。特に自身の挫折体験を披露することで、より相手と親近感が生まれ、ぐっと距離が縮まることがあるからです。このように、顧客との信頼関係をより強固に構築するためには、一つひとつのコミュニケーションを大切にするという意識が求められるのです。
小林 一光(こばやし いっこう)
株式会社アイ・タッグ代表取締役。プルデンシャル生命在籍時に営業マンとして売上日本一、マネージャーとしてチーム日本一という偉業を達成。現在は研修・講演・執筆活動を通じて、結果を出す人材や企業を輩出している。主な著書に『世界最高位のトップセールスマンが教える営業でいちばん大切なこと』『チームで最高の結果を出すマネジャーの習慣』など。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.303(2016年6月6日発行)」に掲載されたものです。