2016年6月20日
Q.寄付金控除について教えてください。
寄付金控除について
A:シンガポールの所得税法では、個人または法人が政府に認可された公益団体(Institutions of Public Character = IPC)などに寄付を行った場合、課税所得からの控除を認めています。
IPCとは、慈善事業団体としてシンガポールで登録されたもしくは登録を免除されている非営利団体のうち、シンガポール政府により寄付金控除の対象となる寄付の受取人として認められている団体を指します。寄付先の団体がIPCであるかどうかは、文化・地域社会・青少年省(Ministry of Culture, Community and Youth = MCCY)が運営する「Charity Portal」というウェブサイト(www.charities.gov.sg)で検索することができます。
寄付金控除の対象は、現金の寄付に限られず、以下のような種類があります。そのほとんどは個人と法人のどちらにも適用されますが、株式の寄付は個人のみに適用され、コンピューターの寄付は法人のみに適用されます。
1)現金
認可IPCまたはシンガポール政府への寄付
2)株式
シンガポール証券取引所に上場する株式またはシンガポールで取引されている投資信託の認可IPCへの寄付
3)コンピューター
ハードウェア、ソフトウェア、付属品、プリンター等の周辺機器を含むコンピューターの所定の教育・研究機関または認可IPCへの寄贈
4)美術・工芸品
国家遺産庁(National Heritage Board = NHB)により認可美術館に認定されている美術館の収蔵品としての価値を有する美術・工芸品の寄贈
5)彫刻または立体作品
公共芸術優遇税制(Public Art Tax Incentive Scheme = PATIS)に基づく屋内の公共空間に展示するための彫刻または立体作品のNHBへの寄贈
6)土地・建物
土地または建物の認可IPCへの寄贈
なお、寄付金控除は、シンガポールの地域社会への貢献を目的とするものを対象にしているため、海外の地震や洪水の被災者支援など、外国への支援を目的とする寄付については、残念ながら対象にはなりません。
控除額
2009年1月1日以後に行われた寄付については、寄付した金額の2.5倍の金額が控除されます。ただし、2015年に行われた寄付に関しては、シンガポール建国50周年を祝して、寄付した金額の3倍の金額が控除されます。例えば、法人が寄付した場合、法人税率を17%として寄付金控除による節税効果を考慮すると実質的な支出額は寄付した金額の57.5%、すなわち10万Sドルを寄付した場合の実質的な支出額は5万7,500Sドルになります。
寄付金控除の繰り越し
課税所得が寄付金控除の金額より少ない場合には、最長5年間繰り越して将来の所得から控除することができます。
寄付金控除の申告
以前は、IPCから発行された「Tax Deductible」と記載された領収書に基づき、所得申告に記載して申告していましたが、現在は、個人も法人も寄付した際に氏名と身分証明番号(NRIC/FIN/UEN)をIPCに通知すれば、IPCから内国歳入庁(IRAS)への報告により、寄付した人の所得から自動的に控除されるようになりました。ただし、IPCから発行される領収書は、寄付の証拠になりますので、念のため大事に保管しておいてください。
取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.)
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.304(2016年06月20日発行)」に掲載されたものです。
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。