2016年8月1日
営業力編 第4回 顧客と信頼関係を築くためのコミュニケーション(後編)
前回に引き続き、今回も「3つの極意(4つの自信を持つ、顧客とのコミュニケーションを密にする、自分の商品価値を高める)」の中の「顧客とのコミュニケーション」について、特に「聴くスキル」と「伝えるスキル」をお伝えします。
まずは「聴くスキル」についていくつかご紹介します。
①オープンクエスチョン(5W1H)とクローズドクエスチョン(YesまたはNo)
前者は答えを求めずに相手に理由を尋ね、詳細を語ってもらうスキルです。5WはWhat(何を)・Why(なぜ)・When(いつ)・Where(どこで)・Who(誰が)。1HはHow(どのように)。これらを使って相手の話をリードすることがポイントです。
後者はYesかNoで答えを求めること。会話の終盤で回答を導くときに有効です。
②「と、いいますと?具体的には?」(具体化)
質問を深堀りしていくスキルです。この質問により、一つの事柄を多角的に検討することで、相手が気づいていないニーズに気づかせることができます。
③「他には?」(拡散、引出し)
②で十分掘り下げた後は「他には?」と質問し、まだアイデアがあればさらに深堀りします。他になければ最後に答えたニーズが相手の真のニーズとなります。ニーズを特定するために役立つスキルです。
④「それを一言でいうと?まとめると?」(要約)
今まで話してきたことを、相手自身が整理し明確にするために有効なスキルです。
次に「伝えるスキル」についていくつかご紹介します。
① Iメッセージ
「私はこう思います」と相手に自分の意思を伝えるスキルです。これは特に目上の方などに有効です。例えば先方のスーツを褒めるときに、「部長、そのスーツ似合いますね!」と言うと、人によっては「大きなお世話だ。若いくせに偉そうに」と、褒めたつもりが逆に反発をされることもあります。こんな時は「部長、私はそのスーツすごく似合うと思います」と、「私は」を入れて伝えることで、相手が素直に受け入れやすくするのです。
②ペーシング(速さ、大きさ、姿勢)
これは相手の話すペースや声の大きさ、さらには姿勢にも合わせて伝えることで、相手があなたの話を受け入れやすくするスキルです。
③+1の状態で臨む
これは相手の話す声の高さや大きさ、その時の雰囲気よりも、少し高めの「+1」の状態で伝えるというスキルです。相手よりも低い状態である、または高すぎる状態だと、相手の聴く気を失わせてしまうことになります。常に相手よりも少し上の「+1」の状態で臨むことで、相手があなたを受け入れやすくなるのです。
④おうむ返し(要約)
これは相手の言ったことをそのまま返してあげるスキルです。例えば相手が「今日は激務で疲れたよ」と言ったら、あなたも「今日は激務で疲れたのですね」と返します。すると相手は「自分の言ったことを認めてくれた」という安心感を持つのです。
このように「聴く」「話す」スキルにもいろいろあります。繰り返しになりますが、重要なことはお客さまとの信頼関係を構築するために、一つひとつのコミュニケーションをいかに大切にするか、という意識を持ち続けることです。
小林 一光(こばやし いっこう)
株式会社アイ・タッグ代表取締役。プルデンシャル生命在籍時に営業マンとして売上日本一、マネージャーとしてチーム日本一という偉業を達成。現在は研修・講演・執筆活動を通じて、結果を出す人材や企業を輩出している。主な著書に『世界最高位のトップセールスマンが教える営業でいちばん大切なこと』『チームで最高の結果を出すマネジャーの習慣』など。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.307(2016年8月1日発行)」に掲載されたものです。