2016年8月1日
新日本プロレス所属 オカダ・カズチカ選手 人生模様を映し出す「日本のプロレス」をアジアから世界へ
―「プロレスの魅力」を読者にわかりやすく解説してください。
ひと言で語るのは難しいです。新日本は業界ナンバーワンの選手層を誇っていますが、それぞれ戦い方や個性、生き様が違います。その多様性やドラマも含めてプロレスなわけで、観客が感情移入できる選手が必ず誰かいるんです。感情をむき出しにして何度でも立ちあがっていくタイプ、抜け目のない奔放なトリックスター、いつもクールでブーイングも受ける自信満々なタイプ、満身創痍になるまでリングに上がり続ける老骨レスラーなど。だから同じ試合は二度とないし、ときには負けた選手のほうが観客から温かい声援をもらい注目される。
新日本は今年、創立44周年を迎えますが、そんなドラマがこれだけ長く続いている娯楽は少ないと思います。一つひとつの試合に光と影、刹那のきらめきがあり、勝つことだけに価値が置かれていないスポーツでもあるんですね。同時にプロレスは人に生きる勇気を与えられる。だからお客さんに痛みが伝わらない技はやりません。どんなに痛くても「観客と痛みを共感できない技で勝つのは意味がない」というのが僕のプロレス哲学です。
―今や「日本プロレス界の顔」ですが、自負していることがあれば教えてください。
実は今年になって先輩の中邑真輔選手(現在、米国にある世界最大のプロレス団体WWEで活躍中)を始めとする5人のトップレスラーが次々と新日本から離脱し、「創立以来のピンチ」とマスコミで騒がれました。当初、これからどうなるのかと不安になったのは事実です。でも、不在になったポジションに誰が座るか考えているようではだめで、すぐに「僕が面白くしてやる」って気持ちに変わりました。逆境がチャンスに見えるんです。うちの団体は、歴代の先輩レスラーやスタッフさんの長い努力の積み重ねでここまで大きくなりました。僕が現場でずば抜けて努力して突出していれば「チャンピオンのオカダがあれだけやっているんだから俺たちもやる」って思ってもらえますから。
―プライベートについて教えてください。
移動時間や休日はマンガをよく読みます。『黒子のバスケ』からはチームプレイの奥深さを、逆境から這い上がる強さやスポーツマンシップの大切さは野球モノの『MAJOR』から学びました。好きなマンガからはすべてその哲学を学ばせてもらっている気がします。ビジネス書も読みますよ。今、日本のプロレス界を背負う立つ立場にいて、各界の方々と会う機会が増えているので、トップに立つ者の心得や対話術、立ち居振る舞い的なことです。レスラーとしてだけでなく人として恰好よくありたいですから。自宅はマンガや書籍だらけです(笑)。
―AsiaX読者にメッセージをお願いします。
富裕層の国というイメージが強いシンガポールには、「レインメーカー(プロレス界にカネの雨を降らせる男)」と呼ばれる僕のような存在はぴったりだと思っています。各国のトップ選手が集まっている今の新日本、いや日本のプロレス界のレベルは世界一だという自負もあります。今年11月15日に開催されるシンガポール大会では世界レベルの戦いが観られることをお約束します。F1やボクシング、様々なスポーツエンターテイメントが開催されているこの国の方々に少しでも注目していただくことで、東南アジアを始め世界各国に日本のプロレスファンが増えることを心から願っています。
日時:11月15日(火)19:00~ 場所:マリーナ・ベイ・サンズ
エキスポ・コンベンションセンター ホールB 料金:48Sドル~228Sドル
チケット購入:www.sistic.com.sg/events/wrest1116
オカダ・カズチカ
1987年11月8日生まれ。愛知県安城市出身。11歳の時に五島列島の叔父の家に山村留学。16歳で単身メキシコに渡り、国内外で活躍した浅井嘉浩氏が校長を務めるプロレス学校「闘龍門」でデビュー。2007年に新日本プロレスに移籍。2010年から2年間の米国武者修行を経て、24歳の若さでIWGPヘビー級王座(初代チャンピオンはアントニオ猪木)に。以降、次々とタイトルを制覇。テレビドラマにも出演を果たすなど現在のプロレス界の人気を牽引する。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.307(2016年8月1日発行)」に掲載されたものです。(取材・写真:宮崎 千裕)