2016年6月20日
金物店を改装し人気のカフェに シンガポールのコーヒー市場拡大に貢献
コーヒーロースタリー「パパ・パルヘタ」創業者 レオン・フー氏
6月9日から12日にかけてF1ピットビルディングで開催されたシンガポール・コーヒー・フェスティバル2016。シンガポールで人気の隠れ家的カフェ「チャイセンファット・ハードウェア(Chye Seng Huat Hardware)」もブースを出展、同カフェを運営するコーヒーロースタリー「パパ・パルヘタ(Papa Palheta)」の創業者であるレオン・フー氏の姿もあった。
フー氏は2010年にカフェ「ロイセルズ・トイ(Loysels’ Toy)」をオープン(現在は閉店)。バリスタが自家焙煎の豆を使いコーヒーを淹れるスタイルは当時まだ珍しく、シンガポールにおけるサードウェーブコーヒー(豆の栽培や淹れ方にこだわった高品質なコーヒー)のパイオニア的な存在といえる。
2012年には、リトル・インディアで「チャイセンファット・ハードウェア」をオープン。チャイセンファットは中国語で「再成發」と書き、「再び栄える」という意味になる。もともと金物店だったショップハウスをカフェとコーヒー豆の焙煎所に改装したユニークな店で、平日・休日を問わず多くの客で賑わう。また2014年には、マレーシア・クアラルンプールの高級住宅街バンサーでカフェ「パルプ」を開店した。印刷工場の建物を改装したカフェで、凝ったインテリアなどおしゃれな雰囲気が好評という。シンガポールやマレーシアのコーヒー市場に詳しいフー氏に、カフェの魅力のほか、両国のコーヒー市場の現状と展望などについて話を伺った。
目次
―コーヒービジネスを始めようと思った理由について教えて下さい。また、なぜ古い金物店や印刷工場を改装してカフェにしようと思ったのですか。
一言で言うとコーヒーへの情熱があったからです。コーヒーやそのカップにはデザインやアート、農家のこだわりといったさまざまな要素が詰まっており、普通の飲み物以上の奥深さがあります。私は20代のときにコーヒーの魅力に目覚め、2009年にパパ・パルヘタを立ち上げました。
現在運営しているカフェについては、歴史のある建物を改装することで、独特の魅力のある店にできるのではないかと思いました。この2店はシンガポールおよびクアラルンプールの市街地中心からは少し離れていますが、近くに駐車場があるなどアクセスが良いこともあり、これらの場所を選びました。
―レオンさんのカフェの魅力についてお聞かせ下さい。
チャイセンファット・ハードウェアでは、エスプレッソをはじめたくさんの種類のコーヒーを取り揃えており、コーヒー豆の産地もアフリカやインドネシアなど多岐に渡っています。仕入先のひとつであるコスタリカのコフィア・ディベルサという農園は、世界中の珍しいコーヒー豆の品種を集め栽培しています。他のカフェでは飲めない珍しいコーヒーを提供できることも、魅力のひとつだと思います。
敷地内にはロースターもあり、ローストしたてのコーヒーを提供できるところは特にご好評いただいています。バラエティ豊かなコーヒーの香りも楽しみながら、お気に入りの銘柄を見つけることができるでしょう。こうしたことができる店は、シンガポールにはあまりないのではないでしょうか。
―現在のシンガポールにおけるコーヒー市場の現状について、どのようにご覧になっていますか。
2008年くらいからシンガポールのコーヒー市場は大きく拡大するとともに、より洗練されてきていると思います。出張やインターネットなどを通じて、海外のスペシャリティコーヒーに触れる機会が増え、こうしたコーヒーへのニーズが高まったことが背景にあります。コーヒーのブランドにこだわる人が増えるとともに、スペシャリティコーヒーが飲める店も増えました。
これまでは店同士での競争も激しかったのですが、最近では市場を拡大するために助け合おうという姿勢が見られるようになりました。既存の市場の中でパイを奪い合うより、協力して市場の拡大を図るほうが賢いやり方ではないかと思います。現在も、他店と共同でコーヒービジネスに関するワークショップなどを継続的に開催しています。バリスタ教室も開催しており、多くの受講生が自分のカフェをオープンしています。こうしたノウハウをできるだけ多くの人と共有し、コーヒービジネスの魅力を広めていきたいですね。
今回のコーヒーフェスティバルでも、さまざまな種類のコーヒーを展示するとともに、講演やワークショップなどを通じて、来場した方にその魅力を伝えることができたと思います。こうしたイベントはシンガポールの市場を拡大するためのいい機会になるでしょう。