2016年10月17日
田辺三菱製薬(MT Pharma Singapore Pte. Ltd.) 医薬品の需要高まるアセアン 情報収集通じて効果的な営業を
アセアンの医薬品ニーズは
感染症から生活習慣病へシフト
今後、アセアン各国における医療行為や医薬品に対するニーズはより高まると多田氏は見ている。「アセアン諸国では貧富の差が激しく、病気になっても貧しいために病院に行けない人も多くいました。こうした中、日本のように全ての国民が公的医療保険に加入できる体制を整えようという動きが、ここ数年インドネシアやベトナムなどで見られるようになりました」。
また経済発展に伴い、医薬品のニーズも変化していくと予測する。「これまでアセアンの国々では、感染症向け抗菌剤や抗生物質の需要が旺盛でした。それが経済成長に伴うライフスタイルの変化もあり、高血圧による脳梗塞や癌、糖尿病など、生活習慣病をはじめとする慢性疾患向け医薬品へのニーズが高まっています。今後、医薬品の需要は感染症向けのものからこれらの分野にシフトしていくと見ています」。こうした中、同社は降圧剤や糖尿病用薬剤などの需要増を見込む。
競合他社もアセアン市場に注目する中、多田氏は同社の営業方針についてこう話す。「同じ種類の医薬品でもメーカーによって違いがあり、『この糖尿病の薬は、腎障害のある人への副作用が少ない』など、患者の健康状態によって最適な薬剤が変わってきます。当社の医薬品の特性について、しっかり医療機関側に説明しながら営業活動を展開していくことが大事です」。
今後は現地の医療機関とのネットワークを構築、販売した医薬品に関するフィードバックを得られるよう関係を築きたい考え。こうした取り組みを通じて、より効果的な営業活動ができ、他社との棲み分けもできるとの考えだ。「承認を取得した医薬品について、どう販売し、どうお医者様に有用性について説明していくか、そのための組織づくりが必要です」と多田氏。アセアン諸国での医薬品ニーズに対してきめ細かく対応していく方針だ。
会社プロフィール
田辺三菱製薬のシンガポール現地法人として、アセアン諸国での医薬品の認可取得および販売などを手がける。
MT Pharma Singapore Pte. Ltd.
60 Anson Road ♯10-01 Mapletree Anson Singapore 079914
Tel: 6603 4207
取材後記
1993年に田辺製薬(当時)に入社した多田氏。2000年に米国でMBAを取得、その後2008年から2013年までインドネシアに赴任した経験もある。「シンガポールは治安が良く交通インフラも整っており、日本に近い感覚で過ごすことができます」と、シンガポールの暮らしは気に入っているようだ。
仕事をするうえでは、誠実であることが何より大事と話す。国籍や文化が違うこともあり、日本人としての常識が通じないとこともあるという多田氏。誠実な態度で仕事をこなしていくことで、そうした相手と信頼関係を築けるよう心がけているという。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.312(2016年10月17日発行)」に掲載されたものです。