2019年5月25日
第6回 「輝かしい未来」を手に 入れるために必要な変革
前回、AI 普及の先にある「すでに起こった未来」として、現在と同じパラダイムに基づいて経済活動が行われるならば、GAFA* が世界を支配し、リーマンショックの比ではない経済破綻が起こりかねない、とお伝えしました。
今回は、それとは異なる「輝かしい未来」を手に入れるために必要な変革についてお伝えします。
「すでに起こった未来」が限界を迎える原因は、一言で言うと「イノベーションの喪失」です。イノベーションが喪失する原因は、人が人として扱われず、人間の優位性である「氣」の力に下支えされた CMH(Creativity,Management,Hospitality)が発揮されなくなることにあることは、過去 5 回のお話でご理解頂けると思います。
では、どうすれば人の「氣」「状態」を高め、人間の潜在能力を発揮させることができるのか。それは一言で言えるほど単純な話ではありませんが、最も重要なことは、第 4 回でお伝えした「従来の資本主義のあり方を根本から見つめ直す」ことです。
なぜ、資本主義は人を人として扱わないのか。それは、利益の追求を至上命題とするからです。ここにおいて、企業の優先順位は「どうやって利益を上げるか」であり、従来の資本主義は、人を利益を上げるための道具として扱ってきた、というのが厳然たる事実です。
そうなってしまう根本理由は、資本主義の基本「資本の論理」に集約されます。
これは「会社は誰のものか」という所有権の議論であり、所有者という観点から言うならば、会社は株主のものです。しかしながら、会社は決してお金だけで成り立っている訳ではなく、従業員、取引先、顧客、社会、ひいては先人の功績や自然環境から様々な資源の「共有」を受けて初めて成り立っています。
にも関わらず、それを「自分のものだ」と主張をすること自体が間違いなのです。その事実を無視して、「自分のもの」「自分の利益」を最大化しようという欲望が暴走すれば、他者はその欲望を達成するための道具に成り下がり、平気で彼らを犠牲にすることを厭わなくなります。
度重なる企業不祥事、ブラック企業問題、リーマンショックがわかりやすい実例であり、WWF(世界自然保護基金 ) は、人類が今の生活を続ければ 2030 年には地球が 2個あっても足りないと警鐘を鳴らしています。
掲載した図は、私が現代資本主義に問題意識を感じ、その解決策として提唱した「十方よし」というコンセプトですが、財務三表のみを見て経営を行っても、周りの九方に犠牲をしわ寄せしている事実は見えません。しかし目に見えないその負債が一定に達した時、企業は破綻します。
企業どころか、経済社会、もっと言えば人間社会も全て破綻してしまいます。
現代資本主義は、人間の欲望を際限なく拡大することで成長してきました。しかし、そのシナリオはもはや限界に達しており、AI の普及によって生産性が飛躍的に向上すれば、破綻のスピードが逆に早まるだけだということは、前回お伝えした通りです。
私たちに今求められている喫緊の課題とは、「自分さえよければよい」と言わんばかりに己の利益を追求する「欲望」ではなく、いかに地球環境まで含めた「他者の幸せ」を追求する「希望」を中心とした経営にシフトするかであり、もっと言えば人間の生き方そのものを変えることにあります。
その時初めて、私たちは人間の「氣」「状態」を最大限に高め、潜在能力を最大限に発揮させ、AI の発達とともに「輝かしい未来」を手に入れることができます。次回以降、その具体的な方法についてお伝えしていきたいと思います。
* GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple )
鳥内 浩一
15 年 以 上に渡り、経営者・マー ケ ッターとして現場で活動しながら、100業種300社以上のクライアントに対してコン サルティングを行い、関わる全てを幸せにする “十方よしの経営学”『日本発新資本主義経営』を広めている。規模の大小・業種業態を問わず、業績向上へと導く手腕に定評がある。著書に「売れる仕掛け」「逆説の仕事術」「『コラボ』の教科書」。