シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP国内外に議論を巻き起こしているフェイクニュース防止法について

法律相談

2019年11月25日

Q.国内外に議論を巻き起こしているフェイクニュース防止法について

このコーナーでは、読者の皆様のお悩み・ご相談を、会計・税制、法律、医学、企業ITシステムのプロフェッショナルが無料にてお答えします。

フェイクニュース防止法とは?

Q. 19年10月2日、シンガポールでいわゆる「フェイクニュース防止法」が施行されたと聞きました。この法律がどのような内容なのか気になります。
 
A. 2019年5月8日、オンラインによる虚偽情報及び情報操作防止法(通称「フェイクニュース防止法」)がシンガポール議会で可決され、これを期にシンガポール国内外で同法をめぐる議論が巻き起こりました。同法の主要な制定目的としては、シンガポール国内で特定の事実に対する虚偽の情報が流れることを防止し、虚偽情報が世間一般に流布された場合に生じる悪影響を可及的に最小化することにあります。
 

シンガポールはどう変わる?

Q. フェイクニュース防止法の制定により、今後、シンガポール政府の政策を批判したり、政府方針に反対の意見表明をすることは禁止されてしまうのでしょうか。
 
A. 同法の規制対象となる行為は、「事実」に対する虚偽情報です。すなわち、意見、批評、風刺、及びパロディは事実の摘示ではありませんので、これらは規制対象ではないものとされています。シンガポール政府の政策を批判したり、政府方針への反対の意見表明は「意見」ですので、当該表現行為が虚偽の「事実」を構成しない限り、同法の適用を受ける可能性は低いといえます。もっとも「事実」と「意見」を明確に区別することは難しい上、どのような表現が虚偽の事実に該当するかの判断を下す主体がシンガポール政府ですので、政府の政策や方針に対する批判をする際には、シンガポール政府がどのような表現を「事実」と判断するのか気を付けた上で、表現行為をする必要があります。このような萎縮効果が生じること自体に、国内外で批判があります。
 

政府の権限

 シンガポール政府は、同法に抵触する情報を流布する者に対し、当該情報の削除、掲載の停止、及び同情報が誤っているという表明を要求する訂正文の掲載を命ずることができます。また、政府は、SNSのプラットフォームを提供している企業に対しても、当該情報が虚偽であったことを利用者に伝達するように命令する権限も有しています。
 

フェイクニュース法に違反した場合の罰則規定

 同法に違反した者は、法人であれば最大100万シンガポールドルの罰金、個人であれば10万シンガポールドル以下の罰金若しくは10年以下の禁錮またはその両方が科される可能性があります。
 

今後の動向

 シンガポールは、報道の自由度に関する世界ランキングで、181ヵ国中151位と下位にランクしています。同法の運用次第では、whatsapp(ワッツアップ)やフェイスブック・メッセンジャーなどの個人的なメッセージアプリでの会話内容も規制対象になります。そのため、今後、どのような運用がなされていくのか注視していく必要があります。
 

 

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注:本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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