2020年5月29日
2020年税制等の第4追加措置 概要について
コロナウィルスの感染による経済への影響が続く中、2020年5月26日に、シンガポール政府から再度の財政出動がアナウンスされました。
世界の一部では感染の落ち着きにより経済活動の再開の動きがみられ、シンガポールも6月1日をもってサーキットブレーカーを終了させるものの、経済再開は3段階に分けて行われます。その第1段階は完全な経済活動の再開ではなく、自宅勤務を原則とすること、ショッピングモールは閉鎖されたままであること、飲食店も店内での飲食は禁止されたままであることなど、相当の制限が加わったままとなっています。(参考ニュース)
このような中、シンガポールのGDPの成長率の予測もマイナス1~4%から、マイナス4~7%へと見通しが悪化してきており、3月の失業率は3.3%と2009年以来の高い率となっています。
シンガポール政府は、経済活動の再開による感染の再拡大を警戒し、経済の回復も早いペースではなされないという判断のもと、再度の財政出動に踏み切っています。第4追加措置の概要について、シンガポールの経済環境や、税制以外で日系企業への影響が高いものを解説します。
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Jobs Support Schemeの更なる拡大
JSSは9か月にわたって、企業が支払う現地人(シンガポール人およびシンガポール永住者)の給与に対して補助金を支給するものでしたが、以下のとおりに拡大措置が取られました。
①支給対象期間が10ヵ月分になり、対象月が1ヵ月追加されました。
②4月及び5月までのJSSはサーキットブレーカーの実施により全産業が75%のサポートなっていましたが、6月2日以降の経済再開後においても事業の再開が禁止されている事業に関しては、引き続き75%が適用されます。
③ 補助金率75%の適用対象業種に建造環境業が追加されました。
以下は現状の制度のまとめとなります。
補助金額
業種 | 補助金率 | 対象給与上限 | 対象期間 |
全業種(以下を除く) | 25% | S$4600 | 10 か月間 10-12/2019 2-8/2020 |
食品および飲食業 | 50% | 同上 | 同上 |
航空および観光業、 建造環境業 |
75% | 同上 | 同上 |
(注)4月及び5月は全産業、6月以降8月までは活動が禁止されている業種には上記にかかわらず75%の補助金となります。
支給時期等
対象期間 | 支給日 |
10-12/2019 | 4/2020 *1 |
5/2020 | 5/2020 *2 |
2-4/2020 | 7/2020 *1 |
5-8/2020 | 10/2020 *2 |
*1:2020年4月の給与については全産業で75%の補助とするため、2019年10月の補助金を75%の補助金率で支給し、4月分の実績にて7月支払分で調整する。
*2:2020年5月の給与についても全産業で75%の補助とするため、2019年11月の補助金を75%の補助金率で支給し、5月分の実績にて10月支払い分で調整する。
政府保有不動産のテナントへの賃料免除
政府保有の賃貸用不動産に入居しているテナントに対して賃料の免除が行われましたが、その範囲を免除額が以下のようにさらに拡大されました。
対象 | 前回までの措置 | 今回の改正後 |
ホーカーセンター | 3ヵ月免除(最低月S$200) | 5ヵ月免除(最低月S$200) |
商業テナント (ホテル、飲食、 小売、医療など) |
2ヵ月免除 | 4ヵ月免除 |
その他の非居住テナント (産業、農業、オフィス、 サイエンスパーク、 ガソリンスタンドなど) |
1ヵ月免除 | 2ヵ月免除 |
私有不動産の中小企業テナントへの賃料支援
前回までの予算措置では政府保有の不動産への賃料免除が行われている一方で、それ以外の私有不動産に対しては固定資産の免除のみが行われ、テナントへの支援が明確ではありませんでした。
今回の措置では、中小企業のテナント(例えば年間の売り上げがSGD100 mil=約75億円以下で、一定の賃貸借契約を2020年3月25日以前に締結している)が入居する不動産オーナーへの補助金への支給が7月末までに行われることになります。なお、これらの固定資産の減免や補助金については、テナントへその利益を移転することが法的に定められています。
当該補助金は政府から自動的に計算され支給されますが、中小企業への賃料相当分が計算されていない場合は、不動産のオーナーは、別途IRASに申請することになります。
当該賃料減免の全体像は以下の通りです。
一定の商業施設 | その他の非居住用不動産 | |
実施済みの固定資産税免除 | 100%固定資産免除 (約1.2ヵ月分賃料相当) |
30%固定資産免除 (約0.36ヵ月分賃料相当) |
今回の政府補助金 | 0.8ヵ月分賃料相当の補助金 | 0.64ヵ月分賃料相当の補助金 |
合計 | 約2ヵ月分賃料相当 | 約1ヵ月分賃料相当 |
例えば上記の一定の商業施設で、大幅な売上の減少があったテナントには、政府(上記の2ヵ月)と不動産オーナーが負担を折半し、合計で4ヵ月分の賃料が免除されるような法改正を進めており、6月中に詳細が公表される見通しです。
eペイメントの促進
ホーカーセンターやコーヒーショップ、工場の食堂等において、QRコードを用いた非接触型の支払い手段の導入を推進する補助金が創設されます。このeペイメントは既に2019年6月にシンガポール国内で統一化したシステムとして導入が開始されたものですが、コロナウィルスの感染対策としても有効であるため、支払時の接触を避ける方法として推進するものです。
この導入にあたって、SGD 1,500の補助(5か月にわたって月SGD 300)がなされます。但し、継続的なシステムの利用と、月当たりの最低取引数の条件が付されることになります。
また、システムは民間の支払いシステム(DBSなどの銀行系やGrab Payなど)と連携するものですが、0.5%の取引手数料についても2023年12月31日まで政府が負担をすることとなります。
この補助金の対象となる範囲は明確に示されていないため、導入したい場合は当局に問い合わせる必要があります。
デジタル化に対する補助金
サーキットブレーカー後においても消費者と対面する飲食業、小売業については、顧客および業務の安全性を確保するためのデジタル化が急務であることから、以下のカテゴリー別にソリューションを導入した場合は、最大SGD 10,000の補助金が支給されます。(基本はPayNow e-invoicing)
業種 | カテゴリー1 Business Process Solution |
カテゴリー2 Digital presence |
カテゴリー3 Data-drivenoperation |
補助金額 | S$2,500 | S$2,500 | S$5,000 |
飲食業 | 会計 人事/給与 及びデジタルオーダー |
オンライン・デリバリー 又はE購買 |
データマイニング分析 |
小売業 | 会計 人事/給与 及び在庫管理 |
E コマース | データマイニング分析 |
適用条件などの詳細は後日公表されることとなっています。
雇用助成金
コロナウィルスの感染拡大への影響を受けた労働者を支援するプログラムとして、SGUnited Jobs and Skills Packageにより10万人規模の雇用の増加を支援することとしています。このパッケージには、公的機関の雇用増加の他、民間の雇用促進、公的研修制度の拡充などが含まれていますが、一定の再訓練・研修プログラムに対応した雇用については、以下の雇用助成金が支給されます。
・40 歳以上の雇用:給与の40%を6 ヵ月間(上限S$12,000)
・40 歳未満の雇用:給与の20%を6 ヵ月間(上限S$6,000)
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