2023年2月1日
中国EV最大手BYDのアジア展開加速、アセアンに続きインドを攻略へ
大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。
昨年10月の本コーナーで、電気自動車(EV)中国最大手BYDによるタイ市場への本格進出を伝えたばかりだが、そのBYDはアセアンを超えてインドの攻略を視野に入れ始めた。急成長が続くインドの自動車市場で、EVシェア4割を目指すという目標を掲げたのだ。23年の現地販売目標を1万5,000台に設定するなど、現時点ではまだ規模が小さいものの、市場の急拡大を見据えて現地事業のテコ入れを図っていく考えだ。以下、BYDの野心的な目標を「亜州ビジネス中国」ニュースで確認しつつ、その背景にあるインド市場の魅力を改めて検証したい。
まず、BYDインド現地法人の幹部が明らかにした目標を見ておこう。
BYDがインド開拓を加速、2030年目標EVシェア40%
世界4位の自動車市場であるインドでのシェア拡大に向け、中国の比亜迪(BYD:1211/HK)が大規模な事業拡大を計画している。BYDインド現地法人のゴパラクリシュナン高級副総裁はこのほど、インドの電気自動車(EV)市場における自社シェアを2030年に40%まで引き上げたい考えを示した。香港紙・明報が12日、外電報道を引用する形で伝えた。
ゴパラクリシュナン高級副総裁はインド市場を戦略的市場とする理由について、消費者がEVの必要性を認識し、充電インフラも整備されつつあると指摘した。
BYDは2007年にインドの商用車市場に進出。22年には乗用車市場にも参入し、ミドルサイズ電動SUV「ATTO3」を投入した。今年は1万5,000台の販売を計画している。「ATTO3」は海外向けの名称で、中国名は「元Plus」。自主開発のリチウムイオン電池「刀片電池(ブレード・バッテリー)」が搭載され、満充電での航続距離は485㎞に達する。
このほか、今年第4四半期(10〜12月)には現地で新たに3モデルを投入する計画。高級セダン「SEAL」(中国名:海豹)などの発売を予定している。(「亜州ビジネス中国」1月12日付ニュース)
BYDがインド市場の開拓を加速させたい背景には、同市場が世界トップクラスの規模に成長するとの思惑がある。インドの自動車業界は、21年の販売台数が約380万台に上るなどアジアで中国、日本に次ぐ3位の規模。世界全体では4位につけているが、「22年の時点でインドの人口が中国を抜いて世界最大になったと推定される」と伝えられたこともあり、将来的には自動車市場もトップクラスに躍り出る可能性が高い。
世界の自動車市場は今やEVが成長のけん引役になっているため、インド市場もEVの伸びに支えられていくと見て良い。この分野で先頭を走るBYDは、現地EVシェア4割の目標が示すように、同市場でも大きな存在感を示していくはずだ。
亜州ビジネスASEAN