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シンガポールにおける裁判所からの令状「Originating Claim」 について

Q1. 突然「Originating Claim」が届きました。どうしたらいいのでしょうか。

 A. 2021年に改定された「裁判所規則2021」(Rules of Court 2021) により、従来の「Writs of summons(召喚令状)」は「Originating Claim」へ変更されました。「Originating Claim」は、原告が訴訟を開始する際に裁判所へ提出する重要な書類です。通常、この書類には「Statement of Claim (請求の理由)」及び「Claimant’s List of Documents (原告の提出書類リスト)」が添付されており、事件に関する事実と原告が保有する書類が記載されています。これらの内容を把握することが、今後の訴訟手続きにおいて重要となります。
 

Q2. 「Originating Claim」の内容に不服ですが放置しても問題ないでしょうか。

 A. 「Originating Claim」の内容に不服があるにも関わらず、放置すると重大な事態を招く可能性があります。「Originating Claim」、「Statement of Claim」送達日から14日 以内に原告の主張内容に反論しない場合には、すべて原告の請求内容を認めたと扱われ、欠席判決が下されることがある点に留意が必要です。欠席判決となった場合、原告は債務返済のための動産差し押さえや売却等の強制執行が可能となります。
 

Q3. 送達に応じないことは可能でしょうか。

 A. 通常、書類は本人に直接送達されます。「裁判所規則2021」により、交付送達(Personal service)として、合意された方法による送達が認められています。例えば、クレジットカードの利用規約では、郵便送達が認められることがあります。
 
 2回目の交付送達を試みた後、原告は裁判所へ代替送達の申請を行うことができます。代替送達は、申請の内容により、SingPassアプリを利用した通知又は裁判所の書類を直接、玄関に貼り付けることが認められており、受領拒否をしようとしても、書類が確実に届くように手配されています。
 

Q4. 弁護士費用が高額なため、直接原告と交渉することは可能でしょうか。

 A. 争うことなく和解を目指すことは可能です。「裁判所規則2021」では、原告は訴訟を開始する前に和解を提案することが義務付けられています。
 
 また、「Originating Claim」受領後でも、和解交渉を行うことで訴訟費用の負担を軽減することができます。ただし、必要な手続きを忘れたり、期限を過ぎたりすると抗弁が無効となる可能性があるため、注意が必要です。
 

Q5. 原告に直接連絡をとることはできますか。

 A. 「Originating Claim」には原告の代理を務める法律事務所の名前、住所、担当弁護士の名前等の情報が提供されます。担当弁護士に連絡をする場合には、案件の「ファイル番号」を伝えることが推奨されます。
 
 「Originating Claim」 の左上には、XX/XX aaaa/bbbb 形式の案件番号と申請年が記載されています。この番号により、管轄の裁判所、請求金額を確認できます。例えば、MC/OCは、治安裁判官法廷(Magistrate’s Court; MC)の「Originating Claim」を意味し、請求金額が6万Sドル未満であることが分かります。FC/Pは、家庭裁判所(Family Court; FC)の遺産(probate matter)に関する案件であることを示します。aaaaは、裁判所で付与される連番、bbbbは申請年を表します。
 

Q6. 訴える相手を間違えた場合、どうすればよいでしょうか。

 A. 法的アドバイスを受けるため、弁護士に依頼することが推奨されます。例えば、当事者を追加する場合は裁判所の許可が必要です。この判断は裁判所の裁量に委ねられますが、第三者が原告に加わり、共同原告として反訴に参加できるかどうかについては、裁判所の見解が定まっていません。
 

Q7. 海外居住者でも口頭尋問に出席できますか。

 A. 弁護士に依頼すれば、弁護士が代理で口頭尋問に出席し、その結果を報告してもらえるため、本人が出席する必要はありません。
 
 弁護士に依頼しない場合は、裁判所の許可を得て海外から口頭尋問に出席することが可能です。この場合は、1人部屋で英語を使用するなどの条件が課されます。コロナ禍ではオンラインでの口頭尋問が行われた事例もあります。