2008年10月6日
インド人の芸術(社会9)
今回は社会・文化の最終回で、舞踊と音楽を中心にインドの芸術について示します。
まずインドの舞踊です。インドでは舞踊は古代より重要な芸術形式であり、伝統的に神話や古典文学と結びついてきました。インドの舞踊は、大きく古典舞踊と民族舞踊に分類できます。
このうち古典舞踊の歴史はかなり古く、古代インダス文明のモヘンジョ・ダロの遺跡からも踊り子の像が出土しています。この世界最古でもあるインドの舞踊は、アジアの国々にも伝わり、各地の民族舞踊の原型ともなっています。
インドの古典舞踊には、さらにいくつかの種類があります。その主なものは、以下の6つです。
古典舞踊として最古の歴史を誇るのは(1)バラタ・ナーティヤムで、南インドのタミル・ナドゥが発祥ですが、インド全土で広く愛されています。おもにひとりの女性によって演じられます。(2)カタカリはケララ州の舞踊劇で、「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」などの神話を題材にしたものです。(3)カタックは北インドのウッタル・プラデシュ州発祥で、ヒンドゥー教とイスラム教の影響を受けており、ムガル帝国時代に特に人気のあったダンスです。(4)マニプリは北東インドでミャンマーと接するマニプル州の踊りで、繊細で優雅さを漂わせるダンスです。(5)クチプディは南部アンドラ・プラデシュ州クチプディで生まれ、ひとりの女性によって演じられる17世紀の舞踊劇です。(6)オディッシは東部オリッサ州で生まれたインド最古の古典舞踊形式とされており、元々寺院で演じられていたものが、後に宮廷にも取り入れられるようになったものです。
もうひとつの舞踊形式である民族舞踊は、一般に広く普及しており、多様な形式を持っています。インドの民族舞踊としてはヒマラヤ山岳地帯の首狩りの踊りから、パンジャブのバングラー・ダンス、カルナタカやタミル・ナドゥの馬人形を使った演劇舞踊、またオリッサ州の優雅な漁民の踊りなど、多くの種類があります。また破壊と創造の神であるシヴァ神は舞踊の神でもあり、宇宙を動かす力を表現する卍のポーズで踊るナタラージャの像は有名です。
次にインド音楽についてです。インドの古典音楽の起源は、紀元前1000年前後のヴェーダ時代にまでさかのぼります。その後今日まで受け継がれてきたインド古典音楽は、南インドのカルナタカ音楽とガンジス河流域を中心とした北インドのヒンドスタニー音楽です。カルナタカ音楽もヒンドスタニー音楽も、通常3~6人程度からなる小さな楽団によって演奏されます。カルナタカ音楽は南インドで発達したこともあってか音楽理論に忠実であり、ヒンドスタニー音楽はペルシャ音楽の影響を受けているという特徴があります。
インド音楽の楽器については、シタールが有名です。シタールは全長が1mを優に超える大きな弦楽器で、半球形の大きな胴体は乾燥させたカボチャで作られています。
以上で本日のテーマについては終了します。
そして、今回で59回を数えたこの「インドビジネス基礎情報」のシリーズも、今回を持って終了とさせていただきます。2年5ヵ月もの長期にわたってお付き合いいただき、ありがとうございました。
私が最初にインドに行ったのは、今から12年前になりますが、それからのインドの変わりようと言えば大変なものがあります。思えばこの連載がスタートしたころは、インドへの関心が盛り上がり始めたころでしたが、今日のようなブームともいえる状況に急速になるとは当時は考えていませんでした。それまでインドは日本人にとって遠い国で、よくわからない国でした。しかしインド人は深いところで日本人と相通じる考え方を持っており、わかりあえる人々です。
そしてインドは、これからの日本にとって重要な国です。シンガポールは、その前線基地としての重要性も増していくでしょう。このシリーズがこれからの皆様のインド・ビジネスの一助になれば幸いです。
私の連載はこれで終了しますが、何かインドに関して必要な情報等ありましたら、有限会社アイジェイシーのウェブサイトで「お問合せ」からフォームにご記入いただくか、メールでご連絡ください。
これからもインド・ビジネスに頑張っていきましょう。ありがとうございました。
文=土肥克彦(有限会社アイジェイシー)
福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインド・ダスツール社と協業、オフショア・ソフト開発に携わる。
2004年有限会社アイジェイシーを設立、ダスツール社と提携しながら、各種オフショア開発の受託やコンサルティング、ビジネス・サポート等のサービスで日印間のビジネスの架け橋として活躍している。
また、メールマガジン「インドの今を知る! 一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.131(2008年10月06日発行)」に掲載されたものです。