次の転機となったのは、社内全体会議で塚田農場のシンガポール進出が発表された時。「同時に駐在員の社内公募がありましたが、私は志願しませんでした。当時は別のプロジェクトを抱えていて余裕がなかった時期。自信と勇気がなく挙手できませんでした」。しかし後日、後悔の気持ちが生まれた。学生時代、海外志向はあったが留学のチャンスを逃したことがあり、留学していたら全く違う人生を歩んでいたかもしれない、と時々考えていたという本多さん。ここで勝負をして自分の壁を乗り越えるべきと思い立ち、もう一度志願するチャンスがほしいと願い出ると、その想いが伝わり正式に赴任が決定した。
2012年9月に来星。本多さんは現地マネージャーとして尽力し、「塚田農場」といえば美人鍋、行列のできる和食店としても知られるようになるまで成長した。だがその成功の裏で、特に初めのころは毎日のように泣き、何度も投げ出したくなったという。「何もかもがわからなくて初めてなことだらけ。スタッフともたくさん喧嘩をしました。一方で支えてくれた人も多く、今の私があるのは、お客様を含め、出会ったすべての方のおかげだと思っています」。
2014年4月には事業部部長に就任。事業が軌道に乗ったことで最近ようやく自分の時間が持てるようになった本多さん。今後は趣味も兼ねて、新しい店に足を運んでトレンドを肌で感じ取りたいという。「私の名前は、さくら。日本人だとすぐにわかり、日本人の代表になれるようにと父がつけてくれた名前です。その名に恥じぬよう、シンガポールで日本の良い印象を満開に咲かせます!」。
本多 さくらさん
