2015年6月25日
「東洋のバニラ」パンダンリーフが語るプラナカン文化
シンガポール土産の定番といえば、カヤジャム。主な成分はココナッツミルク、卵、砂糖ですが、綺麗な緑色に仕上げるために欠かせないのが、パンダンリーフです。パンダンリーフは、マレーシアやタイをはじめ東南アジア一帯でお菓子や料理に使用され、独特な甘い香りから「東洋のバニラ」とも呼ばれています。スーパーマーケットのパンコーナーやローカル菓子店でよく見かける緑色のパンやケーキの多くは、この植物で色付けされた天然由来のもの。シンガポールの人々の生活に根付いているパンダンリーフは、中国南部などからのマレー半島への移民の末裔、プラナカンの文化にも深く結びついています。
プラナカンの工夫が詰まったニョニャちまき
中国暦の5月5日、端午節には、ちまきを供えて家族で食べる習慣があります。2015年の端午節は6月20日に当たりますが、例年5月に入るとシンガポールでも豚肉や塩漬け卵入り、ナツメや甘い餡入りなど、様々なちまきを買い求める人々が見られます。
かつてマレー半島に暮らした中華系プラナカンの家庭でも、ちまきで端午節を祝おうとしましたが、中国のものと同じように作りたくとも、すべての材料が揃いませんでした。そこで、ニョニャと呼ばれるプラナカンの女性達は、キッチンにある食材だけで端午節のちまきを作り上げました。代表的な具材は豚肉と冬瓜のみ。コリアンダーなどのハーブで味付けをして、笹の葉や竹の皮の代わりにパンダンリーフを使ってちまきを巻いたのです。
「パンダンリーフを巻いて蒸すことにより、笹や竹にはない甘い香りが加わって、肉も米も風味豊かになりました」。プラナカン文化の影響が色濃く残るカトンで、この「ニョニャちまき」を販売する店、キム・チュー・クエ・チャンのレイモンド・ウォン氏は言います。ニョニャ達の工夫により生まれたニョニャちまきは、中国の伝統文化がマレー半島やシンガポールで独自の進化を遂げたことを体現する食べ物だと言えるでしょう。