2017年12月26日
ジューチャット
ジューチャット・エリアは保存地区に指定され、パステルカラーのプラナカン建築が並び、ノスタルジックでフォトジェニックな雰囲気を醸している。それだけでなく、多文化が共存し、さらに2010年代からはおしゃれな店も増えて、幾重にも魅力の重なり合った場所となっている。本号では、中心を通るジューチャット・ロードを北から南下して行くかたちでこのエリアを紹介する。
いくつもの文化が交差するジューチャットの成り立ち
現在ジューチャット・ロードの通る一帯は、昔は裕福な地主の所有するプランテーションであった。20世紀初頭、このエリアに自動車が通れる道路の敷設が必要になった際、政府に土地の便宜を図った地主の名前にちなみ、その道路は「ジューチャット・ロード」と名づけられ、周辺は「ジューチャット」と呼ばれるようになった。その後、都心の過密化にともない、中・上流階級のプラナカンや、ヨーロッパにルーツを持つユーラシアンの人々が流入して、美しいプラナカンタイルで彩られた華やかなプラナカン建築(写真①)が次々に建てられ、ジューチャットは郊外の住宅街へと変貌を遂げた。ジューチャット・エリアがプラナカン文化を現在に伝える土地とされているのは、この、プラナカン系住民が多く住んだ歴史による。
大戦中から戦後にかけては、近隣のゲイランが赤線地帯となった影響を受け、ジューチャット・ロード沿いにも飲食店などが増え、にぎやかな歓楽街となった。加えて戦後、ジューチャット・ロードの北側にあったチャンギ・マーケットで、マレー系、インドネシア系、ブルネイ系の人々が商売を始めた影響で、ムスリム色の強いエリアもできた。これらの歴史により、北端から南端まで20分ほどで歩けてしまう長さのジューチャット・ロードは、ムスリム色の強い北側、中華色が強くKTV(カラオケ)が多い中央部、プラナカン文化を色濃く残す南側、の3つの顔を持つようになった。
ノスタルジックでどこか異国情緒のある北側エリア
ゲイランセライ・マーケットからジューチャット・ロードの北端のエリアにかけては、ムスリム色が強い。マレー料理に使う干し魚を売る店、ハラルの飲食店、庶民的な果物屋…隣近所の店が皆顔見知りの昔ながらの商店街、といった風情に和ませられる。ジューチャット・ロードにはローカル菓子を売る店も多いが、Sweetest Choice by Yatie Karim(写真②)の菓子はパック詰めでなく 、オンデ・オンデなど(写真③)を1つ50セントから手軽に買うことができるので、いろいろな種類を試してみるのにちょうど良い。
また、他地域ではなかなか見つけられないマレースタイルの手作りカレーパフの店が、ここでは数メートルおきに現れる。人気店のSha Zah Confectionery(写真④)では、イギリスのコーニッシュ・パスティに似たサクサクした皮の中に、少し辛いマレースタイルのチキンカレーが入ったもの、ポテトがゴロゴロ入ったものなど、大きなカレーパフが1つ1~1.80ドルで売られている。他にも、小腹が減った時にちょうど良い、皮が固めで小ぶりのエポック・エポック(写真⑤)などもある。エポック・エポックはポテトとアンチョビの2種類の味があり、3つで1ドル。