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高校歴史教育が大きく変わります
戦前行われていた皇国史観に基く歴史教育は、日本史(=国史)、東洋史(=中国史を中心としたアジア史)、西洋史の3つの【通史】からなる内容でした。
戦後GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の日本占領下(1945年10月~1952年4月)、自由主義的な歴史観に基く歴史教育に転換。3つの部門史は、日本史、世界史の2つの部門史に統合。基本的な流れは、古代から近・現代へ【ことがら・事件】を年代順に学習。【通史】が中軸になっていることは変わりませんでした。
現行の学習指導要領では4つの科目で構成されています。
『世界史B』(古代~近現代の通史)、『世界史A』(近現代中心の歴史)
『日本史B』(古代~近現代の通史)、『日本史A』(近現代中心の歴史)
学習範囲が幅広く、特に記憶すべき【ことがら、事件】が極めて多い『世界史B』、『日本史B』の2科目のどちらかを、難関大学文系学部受験生の多くが選択してきました。いわゆる典型的な暗記科目としての位置づけです。約70年、基本的にこの枠組みが継続されてきました。それが2020年に下記の表のように再編成されることになりました。
ようやく日が当たる近現代史
「グローバルヒストリー」を扱う科目「歴史総合」
テクノロジー・ 人工知能(AI)の急激な発展と、グローバル化の進展は世界の各地域のヒト・モノ・カネの関連性を強め、ビジネス・留学・国際結婚等が劇的に増加。近現代史(=グローバルヒストリー)を学ぶ意義が大きくなっています。従来型の知識の記憶ではなく、私たちが生きている歴史・社会を俯瞰し、意味を問う学びが今こそ必要とされているのです。
2020年から施行される新指導要領では、前出の歴史4科目は、『歴史総合』『世界史探究』『日本史探求』の3科目に再編成されます。3つの科目は、従来の【通史】としての歴史科目とは、いささか趣を変えたアプローチとなっています。
歴史の意味を問う画期的な歴史科目
必修科目である『歴史総合』だけは、近現代史の通史の流れに沿ってカリキュラムが進みますが、【ことがら・事件】を記憶することではなく
●歴史とは何か?
●社会構造が如何に変化したか? 何故変化したか?
●歴史の資料の活用とは? 事実に如何に迫っていくか?
生徒たちはこのような根源的な問いに常に答えなければなりません。
『歴史総合』は世界史、日本史双方の近現代史のトピックが有機的に統合された融合カリキュラムになっています。強いテーマ性で歴史・社会を深掘りしやすい内容・構成になっています。まさにアクティブラーニングの3要素(=主体的で対話的で深い学び)を総動員すべき学びです。最後に『歴史総合』のカリキュラム構成をまとめます。この構成をみるとどのような学びなのかもイメージできるのではないでしょうか。
『歴史総合』のカリキュラム構成の概要
A.歴史の扉
(1)歴史と私たち
(2)歴史の特質と資料
B.近代化と私たち
(1)近代化への問い
(2)結び付く世界と日本の開国
ア 18世紀のアジアの経済と社会
イ 工業化と世界市場の形成
(3)国民国家と明治維新
ア 立憲体制と国民国家の形成
イ 列強の帝国主義政策とアジア諸国の変容
(4)近代化と現代的な諸課題
C.国際秩序の変化や大衆化と私たち
(1)国際秩序の変化や大衆化への問い
(2)第一次世界大戦と大衆社会
ア 総力戦と第一次世界大戦後の国際協調体制
イ 大衆社会の形成と社会運動の広がり
(3)経済危機と第二次世界大戦
ア 国際協調体制の動揺
イ 第二次世界大戦後の国際秩序と日本の国際社会への復帰
(4)国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題
D.グローバル化と私たち
(1)グローバル化への問い
(2)冷戦と世界経済
ア 国際政治の変容
イ 世界経済の拡大と経済成長下の日本の社会
(3)世界秩序の変容と日本
ア 市場経済の変容と課題
イ 冷戦終結後の国際政治の変容と課題
(4)現代的な諸課題の形成と展望
著:後藤敏夫(ごとう・としお)
WCEグループCEO
World Creative Education Pte Ltd
グローバル教育コンサルタント
Orbit Academic Centre グローバル型進学教室
シンガポール在住。1990年に海外型進学塾「オービットアカデミックセンター」を香港にて設立。日本の学校への進学指導だけでなく、国際バカロレア(IB)などの国際カリキュラムを履修した生徒たちの海外大学進学や国際併願を数多く指導する。30年間一貫して、中学・高等学校や大学のグローバル化を積極的に支援。グローバル教育の最新情報や今後の教育の方向を発信している。