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2025年3月19日

日本の国会にステーブルコインを含む暗号資産に関する改正案が提出される


 
2025年3月12日、日本の金融庁は資金決済法の改正案を国会に提出し、ステーブルコインや暗号資産に関する規制の見直しを図った。この改正案はステーブルコインの準備金の多様化、暗号資産の国内保管義務の拡大、そして新たな仲介者カテゴリーの創設を主な内容としている。今後はビットコインと仮想通貨の専門メディアで詳しい分析がされていくことになるだろうが、ここでは今の時点で判明している内容とその影響を解説していく。
 
まずは、ステーブルコインの準備金に関して。現行の資金決済法では、信託会社が発行するステーブルコインの準備金は全額を銀行の要求払預金に保持する必要があった。しかし、今回の改正案では準備金の最大50%を定期預金や国債で保有することが認められ、1対1の裏付けを維持することが条件とされている。これにより、信託会社はより柔軟な資産運用が可能となり、ステーブルコイン市場の拡大が期待されている。
 
次に、暗号資産の国内保管義務について。日本は2014年のマウントゴックス事件など、暗号資産取引所の破綻を経験してきた。2022年のFTX破綻時には、FTXジャパンがデリバティブ取引を提供していたため、規制当局は顧客資産を日本国内に保管するよう命じており、国内の利用者は海外の破産手続きの影響を受けることはなかった。しかし、現行法では現物取引のみを行う取引所に対して同様の国内保管命令を出すことができない。そのため今回の改正案では、現物取引を行う暗号資産取引所に対しても顧客資産を国内で保管するよう命じることができるよう、法改正が提案されている。
 
さらに、新たな仲介者カテゴリーの創設が提案されている。現在の日本では、ブローカーが顧客を暗号資産取引所に紹介する際、ブローカー自身も取引所として登録する必要がある。今回の改正案では、取引所を運営しない紹介者向けの新たな仲介者カテゴリーを設けることが提案されている。これらの仲介者は取引所と同様に、顧客への資産やリスクに関する開示責任を負い、暗号資産の広告規制も適用される。しかし顧客資金を保有しないため、資本要件は課されない。また、取引所がすべての顧客に対してマネーロンダリング防止のためのコンプライアンスを実施するため、仲介者はこれを行う必要がない。この新たな仲介者の役割は、ステーブルコインの紹介者にも適用されることになる。
 
これらの改正案は、日本におけるステーブルコインと暗号資産の取引環境をより柔軟かつ安全にすることを目的としている。特に信託会社によるステーブルコイン発行の拡大、顧客資産の保護強化、新たな仲介者の導入により、市場の健全な発展が期待されている。
 
さらに、2022年6月3日に改正された資金決済法では「電子決済手段」という概念が定義され、いわゆるステーブルコインの規制が定められた。この改正によりデジタルトークンの法的位置づけが明確化され、電子決済手段等取引業者、暗号資産交換業者、前払式支払手段発行者の行為規制が整理されることとなった。これによって、ビジネス設計において適切な法的対応が求められるようになった。
 
また、2023年6月1日に施行された改正資金決済法により、国内でのステーブルコイン発行が可能となった。これにより、企業間決済の効率化や多国籍企業間の決済における手数料の削減が期待されている。さらに、地方銀行がステーブルコインの発行を検討するなど、地域経済への影響も注目されている。
 
これらの法改正は日本がステーブルコインや暗号資産の規制において先行することを示しており、将来的な取引拡大を見据えた予防的な措置とされている。今後、これらの規制が市場にどのような影響を与えるか、引き続き注目が集まっている。

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