シンガポールにおいて新型コロナウイルス禍の影響を最も受けているのは低所得層で、一方で個人投資家による株式投資、高級住宅購入が増加するという二極化が起こっており、貧富の差が拡大しているようだ。
居住者(国民と永住者)の失業率は4.5%。低賃金職の者ほど解雇される率が高い。専門職・部長級管理職・エグゼクティブ・技術者(PMET)で4~6月に解雇された者は1,000人中2.7人に対し、事務・販売・サービス職では4.5人で、生産ライン・運輸従事者・清掃人・肉体労働者では4人だった。
企業による経費削減でブルーカラーの労働者が、経済・社会活動を制限する「サーキットブレーカー」の影響を甚だしく受けた格好だ。ホワイトカラーの労働者と異なり、ブルーカラーには自宅勤務という選択肢もない。
メイバンク・キム・エン証券のエコノミストによると、金融危機の時は危機の期間が短く、金融機関に影響が集中したが、今回は多くの産業分野が影響を受けており、転職を余儀なくされる労働者も多くなるため、高齢の労働者が転職に必要な新たな技術を身に付けられないという構造上の問題も生じるという。
DBS銀行の個人客(120万人)の所得調査で、3~5月にかけ所得が減少した者のうち月収3,000Sドル(約23万円)以下の層が49%を占めた。このうち半分は所得が50%以上減った。一方で1~9月の証券投資は個人投資家が80億Sド(約6,174億円)の買い越し、機関投資家が64億Sドル(約4,938億円)の売り越しと、個人投資が急増した。高所得層で投資している者の割合が高い。