11月8日、シンガポール関係省庁タスクフォース(MTF)は、延長された安定化フェーズの中間レビューの一環として、一部の安全管理措置(SMMs)の緩和を発表した。今後数週間のうちに、一部のMICEイベント、ミュージカル、スポーツイベントで、ワクチン接種を完了していることに加えて抗原迅速検査(ART)を行うこと等のより厳しい入場条件とすることで、SMMsを緩和する試行的取組を実施する。
また、ホーカーセンターやコーヒーショップで、ワクチン接種状況に応じた安全管理措置(Vaccination Differentiated Safe Management Measures(VDS))のより厳格な実施を段階的に展開。管理者と相談しながら、SafeEntryのチェックインを介した後で、同一世帯から最大5人のワクチン接種完了者が一緒に食事をすることができるようにする。
ドミトリーに住む外国人労働者のSMMsも同様に緩和し、コミュニティ・ビジット・プログラムを拡大、レクリエーションセンター(RCs)への毎日の訪問を許可する。
水際対策については、インド、インドネシア、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦へVaccinated Travel Lanes(VTL)を拡大することにより、世界との接続を安全な方法で復活させていく。
目次
「VDS+検査」措置の試験的な運用
参加前検査の追加、つまり「VDS+検査」措置を条件として、ワクチン接種完了者でリスクの比較的低い者が行う活動に対する制限緩和が試験的に導入される。検査(PCRまたはART)結果がTraceTogetherに反映されているか、イベント主催者または会場運営者が検査を実施する又は検査の実施を直接またはバーチャルで監理する必要がある。
まずは一部のMICE(会議、インセンティブ、会議、展示会)、スポーツ観戦、ライブパフォーマンスイベントから始め、対象のイベントでは、集客上限とゾーン分けの条件が調整された方法で緩和される。この試行的取組はMilken Institute Asia Summit(11月15-16日)から始まり、Bloomberg New Economy Forum(11月16-19日)およびIndustrial Transformation Asia Pacific 2021(11月22-24日)にも適用。JJ Linの2日間のチャリティーライブコンサート「After the Rain」(11月27-28日)および今後数か月のONE Championshipの格闘技イベントも含まれる。要件と安全管理措置の詳細は、それぞれのイベント主催者から発表される。
政府はこれらの試行的取組の結果を評価した上で、同様の措置を他のイベントや場面にどのように拡大していくかを決定する。
ホーカーセンターとコーヒーショップにおける場内飲食の制限
ホーカーセンターやコーヒーショップにおけるVDS強化が以前に発表された。これらの場所はワクチン未接種者が感染しやすく、マスクを外す場所であるため。入場前のワクチン接種状況の確認が適切に行われ、ワクチン接種完了者だけが座って食事をすることができるようにすることが重要だと政府は捉えている。
ただし、これらはVDSの導入と監督がより困難な場所である。国家環境庁(NEA)は、ホーカー協会とタウンカウンシルを指導している最中で、ホーカーセンターの最初のグループは、11月末までに入場管理およびワクチン接種等状況の確認システムを導入する予定。対象のホーカーセンターでは、システムが稼働すると、他の飲食店と同じように、同一世帯のワクチン接種完了者が5人のグループで食事をすることができるようになる。これらは随時、全てのホーカーセンターに適用予定。
コーヒーショップについても、シンガポール食品庁(SFA)が同様に運営者に働きかけており、入場を管理し、客の(ワクチン接種等の)状況を確認するシステムを導入するオプションを提供する。これにより同一世帯の5人がグループで食事をすることができるようになる見込み。それ以外の場合は、現行のグループサイズである2人が適用される。
また、同一世帯の5人までで食事をする場合、住所の確認のために利用できる資料として、NRICとSingPassだけでなく、政府のデジタルアプリであるmyICAとSGWorkPassも利用できることになる。
ドミトリーに住む外国人労働者の行動制限緩和
ドミトリーに住む外国人労働者の98%がワクチン接種を完了しており、COVID-19への耐性が高まっている。また、ブースター接種も良いペースで進んでいるという。ドミトリーでのCOVID-19の感染はここ数週間安定しており、先週PCR検査で陽性となった外国人労働者は1日平均143人だった。また、外国人労働者はワクチン接種の有無にかかわらず、毎週検査を受けなければならないことになっている*。
これを受け、12月3日から、人材開発省(MOM)はコミュニティ・ビジット・プログラムの上限を全てのドミトリー居住外国人労働者について週3,000人から、ワクチン接種をしたドミトリー居住外国人労働者について1日3,000人に拡大し、コミュニティ内の任意の場所に、1回の訪問につき8時間まで訪問できるようにするなど、ドミトリー居住の外国人労働者に対する制限をさらに緩和する。ドミトリーから出る前に実施するイベント前ART検査などの必要な安全措置は、更なる追加予防策として継続される。
政府はまた、外国人労働者がレクリエーションセンター(RCs)を利用しやすい環境を整える。毎日RCを利用することができ、1回の利用は8時間まで延長することができるようになる(現在は週3回まで)。ワクチン接種を完了していない外国人労働者は、RCへ入場する際、事前にART検査を受ける必要がある。
12月中旬からは、RCへのアクセスをさらに増やし、外国人労働者の希望するRCを利用できるようにする。MOMはRCの運営者と協力して、映画の上映やスポーツの試合など、RCでの活動の種類を増やし、大人数での利用を可能とするプロセスを導入していく予定。
新たなART自己検査キットの使用承認
保健省(MOH)と保健科学庁(HSA)は、科学技術研究庁(A*STAR)のDiagnostic Development Hub(DxD)や医療機関の協力を得て、承認検査キットの安全性と品質を確保しつつ、価格を下げていくための取組として、より高品質で手頃な価格の自己検査キットの調達のため積極的に取り組んできた。この一環として、11月8日、HSAはパンデミック・スペシャル・アクセス・ルート(PSAR)制度に基づき、自己検査用のFlowflex ARTキットを承認。承認されたARTキットはこれで9つになり、さらに2つのARTキットもPSAR登録手続きに入っている。これらのキットの価格は、現在のARTキットの価格を大幅に下回るものになる予定。
水際措置の継続的な更新
各国・地域におけるCOVID-19の状況に関する定期的な評価と水際措置の見直しの一環として、カテゴリー別の国・地域リストが更新された(詳細)。これらは2021年11月18日23時59分以降の到着から有効となる。
インド、インドネシア、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦へのVTL拡大
これまでに、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、韓国、スペイン、スイス、英国、米国との間でVaccinated Travel Lane(VTL)が開始され、11月29日からはマレーシア、フィンランド、スウェーデンとの間でも開始される予定。VTLを利用する渡航者は、到着時に隔離(Stay-Home Notice(SHN))の対象とならない。その代わりに、出発前2日以内に受けた出発前検査で陰性であることを証明し、到着後にPCR検査を受けることが求められる。
インド、インドネシアとは11月29日から、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)とは12月6日からVTLを開始する。短期滞在者および長期滞在パス所持者向けのワクチントラベルパス(VTP)の申請は、インドとインドネシアからの渡航者は11月22日から、カタール、サウジアラビア、UAEからの渡航者は11月29日から開始される。ワクチン接種を完了しているシンガポール国籍者および永住権保持者のシンガポールへの帰国には、VTLの利用やVTPの申請は必要ない。
COVID-19と医療の状況
シンガポールにおける先週の対先々週感染者数比率は、約0.8%から1.0%で安定している。より多くの制限が緩和され、より多くの社会活動が行われているため、比率が上向きに変動することを想定する必要があるという。新規感染者数は1日あたり約3,000人で推移しているが、99%近くは軽症または無症状で、大多数は自宅で順調に回復している。
過去28日間で、酸素吸入が必要な患者の割合は全症例の0.8%で安定しており、集中治療室(ICU)での治療が必要な患者の割合は0.3%だった。ICUの感染者数は依然として多いものの、過去1週間は1日あたり130人近くで安定している。ICU病床の占有率は約63%だった。