2023年4月17日
金融政策据え置き、引き締めを休止
シンガポール金融管理局(MAS)は4月14日、金融政策を据え置くと発表した。2021年後半からインフレ抑制に向けて続けてきた金融引き締めを休止した格好。景気後退リスクが高まってきたことから、金融政策の軸足をインフレ抑制から景気維持に移す。
貿易産業省が同日発表した2023年第1四半期の実質国内総生産(GDP、速報値)成長率は、前年同期比0.1%にとどまった。9四半期連続のプラスだが、前四半期の2.1%を下回る。新型コロナウイルス流行後の景気回復期では最低水準で、MASはこうした中、さらなる景気減速を阻止したい考え。
シンガポールは貿易立国であるため、MASは金利ではなく主要貿易相手国の通貨に対する為替レートの誘導目標を定めることで金融政策を調整。通貨バスケットに対するシンガポールドルの名目実効為替レート(NEER)の誘導目標について、傾斜と中央値、許容変動幅を変えることで景気や物価の安定を図る。MASは21年10月から3ヵ月おきに5回連続で引き締めを行い、その結果、現在はシンガポールドルの為替レートが許容変動幅の上方にある。つまり通貨高により輸入価格の上昇を軽減できている状況。ただこれ以上の通貨高は輸出で競争力を失わせ、また景気を後退させる可能性があると判断し、引き締めを休止した。
23年2月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比で6.3%。直近ピークの22年9月の7.5%に比べ落ち着いている。貿産省は、23年通年のインフレ率を5.5〜6.5%と予想。一方、GDP成長率予想は0.5〜2.5%と、前年の3.6%から鈍化するとみている。
(提供:亜州ビジネスASEAN)