電機大手の独シーメンスは6月15日、シンガポールにハイテク工場を新設すると発表した。投資額は2億ユーロ(約31億円)。生産拡大や開発能力向上を目的に総額20億ユーロを投じる世界戦略の一環で、デジタル化や自動化を進めて主導的地位の強化を図るとともに、生産体制の分散化を図る。
ストレーツ・タイムズによると、西部トゥアス地区が候補地で、2025〜26年に開所する計画。半導体や電気自動車(EV)などの産業向けにセンサーや電子モジュールを製造する。同社はシンガポールに1908年に進出し、現在は2拠点で1200人を雇用している。
現在の生産能力は、ドイツと中国が全体の約40%ずつを占めて大きい。シンガポールの新工場は10〜20%を担う見通しで、より柔軟な生産体制を築く。ローランド・ブッシュ社長兼最高経営責任者(CEO)は、世界情勢が変化する中で生産を維持できる体制は重要になると強調。コスト削減を目的とした一極集中のデメリットが大きいことは、新型コロナウイルスの流行からも学んだとした。一方、シンガポールの賃金の高さは、人材スキルやインフラの質、生産分散化によるメリットなどを考慮すれば問題にならないとしている。
新工場の設計・建設には、シーメンスが持つデジタルツイン技術(現実の空間を仮想世界に再現する技術)や最先端のインテリジェント・ハードウェア技術を使用。工場デジタル化の新基準となる接続性や自動化率を実現するとしている。
(提供:亜州ビジネスASEAN)