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社会

2024年7月15日

2023年の出生数、過去50年以上で最低に

 シンガポールの2023年の出生数が、過去50年以上で最低となり、「ベビードライ」の深刻化が浮き彫りになった。移民チェックポイント局(ICA)が7月11日に発表した「2023年出生・死亡登録報告書」によると、2023年に生まれた赤ちゃんの数は3万3,541人で、2022年の3万5,605人から5.8%減少した。これは2021年の3万8,672人から13.3%減少したことになる。
 
 1971年には4万7,088人の赤ちゃんが生まれており、これ以降で最も低い数となった。また、2023年の総出生率(TFR)は0.97で、シンガポールの歴史上初めて1を下回った。TFRとは、一人の女性が生涯に産む子供の平均数を指す。
 
 出生数が減少する一方で、死亡数は増加している。2023年には2万6,888人が死亡し、2022年の2万6,891人からわずかに減少したが、2021年の2万4,292人からは10.7%増加している。主な死因は心臓病や高血圧性疾患、肺や呼吸器系の病気で、これらが2023年の死因の半数を占めている。
 
 また、2023年の報告書では、異なる人種の親を持つ赤ちゃんのうち28.4%が複合民族の登録をされていることが初めて示された。これは2014年の12.9%から増加している。2011年以降、異なる人種のカップルは子供の出生登録の際に両親の人種を反映させるオプションを選択できるようになった。
 
 出生率の低下には複数の要因が考えられる。政策研究所(IPS)の研究員タン・ポーリン博士は、25歳から29歳、30歳から34歳のシンガポール人女性および永住者の出生率が低下していることを指摘する。また、生活費の上昇も要因の一つとされている。
 
 同じくIPSのジャン・ヤング教授は、育児や家事の多くが女性に課されているため、女性にとって子供を持つことが高い機会費用を伴うと述べている。これが女性の高賃金、キャリア発展、自己利益、余暇の犠牲につながりやすいとのことである。
 
 少子高齢化は介護負担から経済活力に至るまで、シンガポールにとって重大な課題である。インドラニー・ラジャ首相府担当大臣は、出生率の低下と平均寿命の延長が相まって、労働人口の減少や次世代の機会創出の難しさを指摘している。

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