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配偶者虐待件数が増加、報告の増加が要因

 シンガポールで配偶者による虐待件数が増加している背景には、被害を報告する意識が高まっていることがあると、ソーシャルワーカーが述べている。2023年には新たに2,008件の配偶者暴力が報告され、前年の1,741件から15%増加した。2021年には1,632件であったことからも、増加傾向が続いていることが分かる。これらのデータは、シンガポール社会・家庭開発省(MSF)が9月26日に初めて発表した「家庭内暴力動向報告書」で明らかにされた。
 
 MSFや他の機関による家庭内暴力に関する啓発活動が進んだことで、問題への認識が高まり、被害を報告することへの抵抗感が薄れたという。ケア・コーナー・シンガポールの家族・コミュニティサービス副部長、マーティン・チョック氏は「以前は、家庭の問題を公にすることをためらう人が多かったが、政府が家庭内暴力の対策に力を入れるようになってから、家族が危害を受けていると通報が増えてきた」と述べた。
 
 配偶者の虐待では、特に妻が被害者になるケースが多く、被害者は通常、身体的、感情的、心理的な虐待が混在している。多くの被害者は平均で4〜7年間も虐待を耐え忍んだ後にようやく助けを求める傾向があるという。たとえば、アナミカさん(仮名)は、元夫による11年間の精神的虐待に耐えた後、ついに「限界」を感じ、助けを求めた。
 
 この報告書は、配偶者虐待の実態を明らかにする一方で、警察や裁判所に直接報告された未集計のケースが存在する可能性も指摘しており、実際の件数はさらに多いと見られている。