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社会

2025年2月7日

シンガポールの学校で電子決済が普及、利便性とスピードを実感

シンガポールの学校で電子決済の導入が進み、利便性とスピードの面で多くの生徒や業者から歓迎されている。ペイ・チュン・パブリックスクールの小学5年生、メーガン・ハンさん(10歳)は休み時間に焼きそばを購入し、スマートウォッチを決済端末にかざして数秒で支払いを完了した。全国で23万人以上の生徒が、学食や文房具店での買い物に電子決済を利用するようになっている。
 
決済の迅速さは、短い休み時間内に食事を済ませる生徒にとって大きな利点となっている。アンダーソン・セカンダリースクールで食堂を運営するキース・ロー氏(51歳)は、「現金払いでは釣り銭の計算に10〜30秒かかることもあるが、電子決済なら生徒はスキャンしてすぐに進める」と述べる。決済端末を使用すれば、単品での注文にも柔軟に対応でき、より多くの生徒に迅速に提供できるという。
 
この電子決済の導入は、2017年に19校で開始された「POSBスマートバディ」プログラムの一環である。子どもたちがデジタル決済と金融リテラシーに慣れることを目的とし、2022年にはシンガポール教育省(MOE)とPOSB銀行が提携し、2025年までに全国の小中学校、ジュニアカレッジ、ミレニア・インスティテュートへの拡大を目指している。
 
2024年12月時点で、MOEの学校の70%以上が導入を完了し、小中学校の80%、ジュニアカレッジとミレニア・インスティテュートの15%が参加している。各学校には平均8台の決済端末と、残高確認用の端末2台が設置されており、生徒はスマートウォッチやカードのほか、ez-linkカードやATMカードなど多様な決済方法を利用できる。
 
一方で、課題も指摘されている。業者の中には、電子決済では現金のように即時入金されないため、キャッシュフローに影響が出ると懸念する声もある。また、電子決済では生徒が支出を把握しにくく、週の前半に使いすぎて後半に節約する傾向が見られるという。
 
POSB銀行は生徒の金融知識向上のため、2024年7月から小学校と幼稚園で貯蓄を促すワークショップを実施し、すでに2万8,000人以上の生徒が参加している。
 
 アンダーソン・セカンダリースクールのタン・ポーチン校長は、「電子決済の選択肢を提供することで、生徒の金融行動を徐々に変えていける」とし、全国的な導入拡大に期待を寄せている。

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