2025年2月18日
シンガポール 2025年度予算案(Budget 2025)概要
本日発表された2025年度予算案は、労働者や企業の支援、生活費の軽減、技術革新の促進を通じて、シンガポール経済の持続可能な成長と安定を目指す内容となっている。ローレンス・ウォン首相は、世界的な緊張の高まりがシンガポール経済に及ぼす影響を考慮し、慎重かつ戦略的な財政運営を行う方針を示した。
1. 財政状況と経済成長見通し
2025年度の財政収支は、68億Sドル(GDPの0.9%)の黒字が見込まれている。これは、経済学者の予想とは異なり、堅調な財政運営が続いていることを示している。2024年のGDP成長率は4.4%と比較的高い水準を維持したが、2025年は1.0%〜3.0%の範囲に減速する可能性があると予測されている。これは、世界経済の不確実性や地政学的リスクの高まりが影響するとみられる。
2. 労働者と企業への支援
(1)スキルアップと雇用支援
政府は、労働者のスキル向上を支援するプログラムを強化する。特に、成長産業への転職を促進するための再訓練プログラムが拡充される予定である。これにより、労働者が将来の雇用市場の変化に適応しやすくなることが期待される。
(2)法人税リベート
企業向けの支援策として、法人税リベートが50%(上限4万Sドル) 提供される。この措置は、企業の負担を軽減し、事業拡大や投資を促進する狙いがある。
(3)低所得労働者の賃金支援
低所得労働者の賃金引き上げを支援する施策も導入される。これにより、所得格差の縮小と生活水準の向上が図られる見込みである。
3. 生活費の軽減策
(1)SG60パッケージ
シンガポール建国60周年を記念し、すべてのシンガポール国民を対象に現金給付、CDCバウチャー、U-Saveリベートなどの支援が提供される。このパッケージは、生活費の負担を軽減し、国民の生活の安定を図るためのものである。
4. 技術とイノベーションへの投資
(1)半導体研究開発施設の設立
政府は、10億Sドル(約7億4,500万USドル)を投じ、半導体研究開発施設を設立する計画を発表した。これは、シンガポールの半導体産業を強化し、世界的な技術競争力を高めることを目的としている。
5. 公共支出の増加
2025年度の総支出は1,229億Sドル であり、前年から1%(12億Sドル)の増加となる。この増加は、主に社会福祉、インフラ整備、技術革新への投資によるものである。政府は、堅実な財政運営を維持しつつ、必要な分野への投資を積極的に行う方針を示している。
まとめ
2025年度予算案は、経済の不確実性に備えながら、労働者や企業への支援を強化し、国民の生活費負担を軽減することに重点を置いている。また、技術革新への投資を通じて、シンガポールの競争力をさらに向上させることを目指している。政府は今後も、経済の安定と成長を両立させるための施策を継続的に実施していく方針である。