シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXニュースTOP労働者輸送のトラック禁止は非現実的、中小企業の存続に影響

政治

2025年2月28日

労働者輸送のトラック禁止は非現実的、中小企業の存続に影響

 トラックの荷台で労働者を輸送する慣行を禁止することは「現実的ではない」とし、禁止すれば一部の中小企業の存続が危ぶまれると、運輸・持続可能環境担当のアミー・コー上級国務大臣が2月26日の国会で述べた。
 
 コー大臣は、「多くの中小企業にとって、労働者と機材・貨物を別々の車両と運転手で輸送することは実用的でも経済的でもない」と指摘。禁止すれば、一部の企業が事業を続けられなくなり、国内外の労働者が職を失う可能性があると述べた。
 
 また、公共住宅(HDB)、学校、病院、MRT建設などの重要プロジェクトの遅延や、シンガポール国民の負担増にもつながると警鐘を鳴らした。
 
 これはニー・スーン選挙区のルイス・ン議員からの質問に対する回答で、彼は長年にわたりトラック荷台での労働者輸送の安全性向上や禁止を求めている。
 
 一方で、コー大臣はバス運転手の深刻な不足を理由に、トラックの使用禁止は「実行不可能」と述べた。しかし政府は、トラック以外の輸送手段の促進に取り組んでいるとし、建設会社ウォー・ハップの例を挙げた。同社は多くの労働者をバスで輸送している。
 
 政府はまた、労働者寮を建設現場近くに設置することで移動の必要性を減らし、造船所や大規模建設現場ではすでに実施していると述べた。
 
 さらに、安全対策として速度制限装置の設置や、運転手の十分な休息確保、雨よけカバーの義務化などを実施。違反企業には労働省と交通警察が制裁措置を取る。
 
 コー大臣は、2015~2019年の年間平均215件の負傷者数が、2020~2024年には161件と25%以上減少したと指摘。また、過去10年間の平均年間死亡者数は1人だったと報告。
 
 2024年12月15日、トゥアスで発生した事故では、40歳のバングラデシュ人労働者ショハグ・モハメッド氏が死亡。トラック荷台の工具箱が倒れたことが原因とされる。運転手は過失致死の疑いで捜査を受けており、最大2年の禁錮刑および罰金が科される可能性がある。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXニュースTOP労働者輸送のトラック禁止は非現実的、中小企業の存続に影響