シンガポール政府は、深刻な被害をもたらす詐欺犯罪に対し、鞭打ち刑の導入を検討している。2024年の詐欺被害額が過去最高を記録したことを受け、対応の強化が求められている。
スン・シュエリン 内務兼社会・家庭開発国務大臣は、3月4日の国会予算審議において、この方針を明らかにした。ジュロン選挙区のタン・ウーメン議員は、詐欺犯罪に対する鞭打ち刑の法制化を提案し、スン大臣は「詐欺の重大性を踏まえ、検討する」と述べた。
タン議員は、クレメンティ地区の住民が全財産を詐欺で失い、破産や失業の危機に直面している事例を挙げた。また、違法金融業者を支援した場合には鞭打ち刑を含む厳罰が科されるのに対し、詐欺犯罪には適用されていない現状を指摘。「シンガポールは詐欺師に対して甘すぎるのではないか」と疑問を呈し、「詐欺師には決して忘れられない教訓を与えるべきだ」と強調した。
シンガポール警察によると、2024年の詐欺被害額は11億Sドル(約1,200億円)を超え、初めて10億Sドルを突破。2019年以降の総被害額は34億Sドル(約3,700億円)を超える。さらに、詐欺を支援する「マネーミュール」への処罰強化として、最低6カ月の禁錮刑を求める新たな判決指針が2024年8月に提案された。
政府は、詐欺防止策としてローカルSIMカードの悪用抑制にも取り組んでいる。2025年には、警察と銀行の連携を強化し、詐欺関連口座の特定を進める方針だ。また、テレグラムを悪用した詐欺が急増しており、政府は同社に対し、利用者の安全確保と厳格な認証措置の導入を求めている。
オンライン詐欺対策として、2024年6月には「オンライン通信規範」と「電子商取引規範」が導入された。これにより、主要プラットフォームに対して詐欺防止策の強化が義務付けられた。フェイスブックでは、政府発行の記録を基にした厳格な認証制度が導入され、マーケットプレイスでの詐欺が60%減少する成果を上げた。
スン大臣は、「詐欺犯罪は高度に組織化され、技術を駆使して常に手口を変えている。我々は引き続き積極的に対応していく」と述べ、政府の取り組みを強調した。
シンガポール政府、詐欺犯罪への鞭打ち刑導入を検討
