シンガポールにおける企業の柔軟な働き方の導入が進んでいる。2024年には柔軟な勤務制度を導入する企業の割合が72.7%に達し、2023年の68.1%から増加した。3月7日の国会で、シンガポール人材開発省(MOM)のガン・シオウ・ホアン国務大臣が発表した。
政府は「キャリア転換プログラム(Career Conversion Programmes)」を拡充し、柔軟な労働環境下での転職者や従業員のリスキリングを支援する。この施策は特に女性や介護者がキャリアと家庭の両立を図ることを目的としている。
このプログラムは現在、金融、流通、建設、情報通信など約30の成長産業で実施されている。プログラムの形式は、①実地研修、②研修と業務体験、③新たな職務へのリスキリングの三種類がある。企業はWorkforce Singaporeのウェブサイトで申し込みが可能だ。
従来、フルタイムの職に限定されていたが、2024年4月1日からは、パートタイムなどの柔軟な勤務形態にも適用される。対象となる労働者は、成長産業の職種にリスキリングされ、最低1年間の雇用契約が必要となる。例えば、サイバーセキュリティ企業がパートタイム従業員を採用する際、本プログラムを活用し、他業種からの転職者を研修できる。研修期間中、政府は給与の最大90%(月額7,500Sドルまで)を補助する。
また、労働環境の公平性を高めるため、2025年には「職場公平法(Workplace Fairness Bill)」が成立し、人種や年齢など5つの特性に基づく差別を禁止する。また、タントン・シーレン人的資源相は3月6日、人的資本の向上に向けた「三者間人的資本能力開発ワークグループ」の設立を発表。HR基準の向上と企業の成長支援を目指す。
さらに、一部議員から公休日の増加が提案されたが、政府は「慎重な検討の結果、現行制度を維持する」との立場を示した。ただし、企業には従業員が重要な祭日を尊重できるよう、柔軟な対応を求める方針を示している。
シンガポールの労働環境は、柔軟性と公平性を重視し、企業と労働者の双方にとって持続可能な形へと進化している。
シンガポール企業の柔軟な働き方導入が拡大
