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社会

2025年3月19日

シンガポール川に初の太陽光発電電動ボート、2025年4月から運航開始

 シンガポール川で太陽光発電を利用した電動ボートが運航を開始する。2025年4月までに10隻のうち2隻が就航し、年末までに残りの8隻が順次投入される予定である。
 
 この新型電動ボート「Pyxis Rフェリー」は、地元の海事系スタートアップPyxisが製造し、リバークルーズ運営会社WaterBの既存船20隻のうち半数を代替する計画である。Pyxisの創業者兼CEOであるトミー・フン氏によると、各ボートに搭載された太陽光パネルは1日あたり約22kWhの電力を発電でき、10隻分の発電量はHDBフラット20戸の1日分の電力に相当する。
 
 リバーボートは主に夕方から夜間に運航されるため、午後の待機時間中に太陽光発電を活用できる。1隻の運航に必要な電力はヘアドライヤー3~4台分に相当し、太陽光パネルの活用によりシンガポールの電力網への依存を軽減できる。
 
 さらに、Pyxis Rフェリーはシンガポールで初めて「車両から電力網への供給(V2G)」技術を導入する船舶の一つであり、余剰電力を電力網へ供給することが可能である。フン氏は、この技術を活用すれば、浮桟橋でのイベントなどのマイクロウォーターフロントプロジェクトへの電力供給が可能になると述べた。
 
 2024年3月には、Pyxisが電動作業船を導入し、マリーナサウスピアと近隣の停泊地間で作業員を輸送する運航を開始した。現在、船舶向けのV2G充電インフラは存在しないが、シンガポールでの試験導入に向けた合意が3月17日に締結された。署名には、Pyxis Maritime、SP Group傘下のSP Mobility、The Mobility House Asia Pacific、WaterBが参加した。
 
 WaterBのダレン・タン氏によると、新型フェリーは48席を備え、長期的な運航コストを30~40%削減できる見込みである。雨天時でも発電量は日常運航の50%以上を賄うことができるという。乗客はWaterBのウェブサイトまたはチケット販売所で予約可能で、運賃は大人28Sドル、子供18Sドルである。
 
 WaterBは現在1日60~80便を運航しており、今後の利用者数の大幅な増加は見込んでいない。しかし、新型フェリーの導入は環境負荷の少ない持続可能な観光の推進に貢献するとしている。また、電動フェリーは静かで安定した運航が可能であり、乗客にとって快適な移動手段となる。
 
 3月17日にアートサイエンス・ミュージアムで行われた発表会では、運輸省のベイ・ヤム・ケン上級政務次官がPyxisとWaterBを祝福し、「この船は伝統と最先端技術を融合させたものであり、クリーンエネルギーが機能的かつ商業的に実現可能であることを示している」と述べた。

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