2025年3月21日
移民労働者のトラック輸送禁止を求める声、人権団体が提言
シンガポールの移民労働者支援団体「Humanitarian Organisation for Migration Economics(HOME)」は3月19日、移民労働者のトラックによる輸送を禁止するよう政府に要請した。
HOMEは、禁止措置の導入と並行して、企業がバスなどの安全な輸送手段へ移行できるよう、12ヵ月間の補助金を提供するよう提案した。移行を早期に進める企業には、補助金を即時支給し、追加の一時金を与えるべきだとしている。
報告書では、段階的な禁止措置の導入や、バスやバス運転手の不足問題への対策強化、トラック輸送の安全規制の厳格化なども提言された。現在、シンガポールでは、雇用主または契約者の所有する車両であれば、労働者をトラックの荷台に乗せることが認められているが、HOMEはこの例外措置の撤廃を求めている。
HOMEの提案では、大企業には18ヵ月、中小企業には36ヵ月の移行期間を設け、その間に政府がバス不足や運転手不足、企業の財務的負担に対処することが必要とされる。
一方で、交通担当上級国務大臣エイミー・コー氏は2月、議会で「中小企業にとっては実施が非現実的であり、倒産や失業につながる可能性がある」と述べ、禁止措置に慎重な姿勢を示した。また、HDB(公営住宅)や学校、病院、MRTの建設プロジェクトの遅延やコスト上昇を招く恐れがあると指摘した。
HOMEは、安全な移動手段の確保に伴うコスト増加を理由に、危険な輸送方法を継続することは容認できないと主張。使用済みの公共バスを労働者輸送に活用することや、外国人バス運転手の受け入れ枠拡大も提案した。
シンガポール社会科学大学の交通経済学者ウォルター・テシーラ氏は、政府が国内の建設契約の約55%を管理していることを指摘し、企業に労働者の安全基準を義務付けることで、新たな規範を確立できると述べた。